次世代経営人材育成ウェビナーから我が子の育成を考える ~我が家の「と」は?~(シニアコンサルタント齋藤正幸)

はじめに

先日、弊社にて「次世代経営人材育成(サクセサー)は育成できる」をテーマに弊社代表取締役の松村がスピーカーとなり無料ウェビナーを実施した。多数の方に拝聴頂き、且つ、とても好評だった。

このウェビナーのポイントのひとつは、『「管理職」と「経営者」の違いとは』である。PFCでは、その違いは「と」であると考えている。つまり、優秀な課長や部長は、「1つ」のことであれば十分に成果を出せるはず。しかし、経営者は、本来相矛盾する「2つ(以上)」の同時追求が求められている。例えば、“今”を効率的に運営しつつ“将来”も構想するなどである。私の担当するクライアント様からも、とても納得感があった、その通りだと感じたとのコメントが複数あった。

私も、松村の話を聴いて改めてなるほどと腹落ちした。その一方で、私自身は職場では経営者ではない。職場で「と」に関して実感することが難しいのであれば、家族の経営者?として、我が家の子供たち(7歳と9歳の娘達)に対して子育ての観点でこの様な相矛盾するテーマがあるのか振り返ってみた。

なるほど、パパ業もやはり経営者に近いなと感じた。今回は、子育てにフォーカスしている為、経営者が有する本来の「と」ではないとは思うが、「と」の矛盾にどの様に向き合い、行動するかは体験出来る(又は体験してきた)と感じている。ちなみに、我が家には3つの「と」があった。今回は、その3つについて、私が直面した矛盾との葛藤とその向き合い方をお伝えしたいと思う。そこから、組織開発や子育てへのヒントを何か1つでも得て頂ければ幸いである。

我が家の3つの「と」

まず、子育ての観点で我が家が持つ「と」の一つ目は、①【自分のことは自分でやる】「と」【相手を助ける】である。

VUCAの時代、何が起こっても自分で考え、自分で判断・対応出来るようになってもらいたい。一方で、困っている人がいたら、手を差し伸べることが出来るようになって欲しい。現状、例えば、次女がパズルを完成できず困っている時に、長女は自分で考えてね!の一言で手助けをしようとしない場面がある。私としては、自分のことは自分でやり切らせるのはいいのだが、相手が困っているのであれば手を差し伸べようよ、と悩むのである。

二つ目は、②【やりたいことをやれ】「と」【人に迷惑をかけるな】である。

基本、創造力を発揮し、私たち大人が考え付かないようなアイディアを出し、行動に移して欲しいと思っている。その為、何でもやりたいことはやっていいよと伝えている。ただ、自分が早くやりたいから公園の遊具を使い順番を守らないことや、お互いがカッとなって姉妹で蹴り合いをするような喧嘩をすることなど、「やりたいからやる」という本能的な行動だけでなく、自分自身だけでなく他人を傷つける又は不快な思いをさせないように理性的な行動をとるようにとも言っているのである。この矛盾する考えをどの様に理解してもらえばいいのかと、これも日々、悩むのである。

三つ目は、③【Must(○○すべき)】「と」【Will(○○したい)】である。

例えば、次女が途中まで読んでいた本の栞を長女が落としてしまった。それに気づいた次女は「どこまで読んだか分からなくなった」と騒ぎ立てる。それに対し、長女は面倒くさそうに「うるさいな。ごめんね!!」と伝える。この場面をみて、私は長女に一言「ただ、あやまればいいてもんじゃないだろ!!」。相手に対して悪いことをしてしまったら謝るべき(Must)。ここまでは、長女も理解している。だが、何の為に謝っているのか、ここが重要である。次女に対して申し訳ないなという素直な気持ち、又は、同じ事はしないように気を付けるからねと言う気持ち、つまり、言葉や行動にWill(心)がしっかりと入っているのか。表面的な行動ではなく、そこに心を込めて欲しいと考えているのだが・・・

以上、三つの「と」に関して次項以降、振り返ってみたいと思う。

自分のことは自分でやる「と」相手を助ける

自分でやり抜く力と相手を思いやる又は助けたいと思う気持ちは、ビジネスにおいても周りから信頼を得る為に、且つ、チームで成果を出す為に、この両志向をバランスよく出す必要があると言われている。

我が家では、娘たちの自主性を伸ばす為に、例えば、「宿題を忘れてもパパは困らない。自分はどうしたいんだ?」と自分のことは自分で考えるように促している。「マンガでよくわかるアドラー流子育て(著者:宮本秀明)」でも親の課題と子供の課題を切り離すことが大事だと言っている。子供の課題とは、子供のある行為の結果が最終的に子供自身に降りかかることである(上述の例であれば、宿題を忘れて先生に叱られるのは娘自身)。子供の課題に干渉しすぎると、親依存の子どもになり自主的に考えて行動することが難しくなると言われている。一方で、共同の課題(相手が自分の課題に対して相談や依頼してきた時は子供と親の両方の課題となる)の時は、しっかりと支援する必要がある。その為、私も常々、「助けて欲しい時は、いつでも言ってね。ただ、自分で努力してみて難しいなと思ったらだよ」と、自分自身で考えることを促しつつ、困った場合にはいつでも支援するよと伝えている。しかし、普段から、努力しろ!と言いすぎ?ているせいか自分で努力してやり切るという考えが娘達に強く芽生えていると感じた。世界で最も有名なサッカー選手の一人であるメッシの言葉に「努力すれば報われる?そうじゃないだろ。報われるまで努力するんだ」がある。パパのお気に入りの言葉である。そして、子供たちからは「はいはい。また、それね。分かった、分かった」と言われるくらい話していた(余談ではあるが、今年の春に神社に言って絵馬を書くことになった。そこで、義理の祖母が当時6歳の次女の絵馬に衝撃を受けていた。その絵馬には「どりょくできるひとになれますように」と書かれていた・・・)。つまり自分でやり抜くメッセージが強すぎて、相手を助けるとういメッセージがかなり薄まっていたのだ。

今後は、努力だけでなく、相手を助ける、相手に寄り添うことを全面的にメッセージングして行こうと考えている。

最近、長女が、お家でお店屋さんを始めた(学童のイベントでお店屋さんごっこをし、とても楽しかったらしい)。我が家では、それをリアルに行っている。自分のお小遣いでお菓子やジュースを買って、それをパパやママに売るのである。もちろん、利益が出るようにパパと一緒に単価などを計算し、稼いだお金で更にお菓子を仕入れている。その時に、「パパやママが、欲しいなと思わないと買わないよ。その為には、パパたちが何を食べたいか、ちゃんとお話を聴かないとね」「また、何に困っていて、何があると助かるのか、何を売ればパパたちが喜ぶか考えながら仕入れるんだよ」と伝えている。最近では、パパの体が硬いと知って、背中を足でフミフミしてくれるマッサージのサービス券まで売るようになった。違う角度からではあるが、相手を助けるというメッセージは、少しずつ伝わってきたかなと感じている(加えて、最近、長女と「こども論語と算盤」(著者 守屋淳)という絵本を読みながら、思いやりや世の中への貢献について一緒に勉強している)。

一方で、次女の方はと言うと、ある時、一緒にお風呂に入っている際に、突然、「パパは天国にいける?」と訊いてきた。「行けると思うよ。天国に行くために、これからも頑張っていい事しようと思っているからね」と答えた。「はー(ため息)、それじゃー無理だよ。自分の為にいい事してもだめ。この人を助けたいと思わないと天国にいけないよ。はーー(2回目のため息)」。ため息と私を置いてお風呂から出ていた。その後、妻にもパパは天国いけないよ。だから、天国の行き方を私が教えてあげたと得意げに妻に語っていた。7歳児に諭されて、ちょっと悔しいパパでもあり、相手の為に考え・行動することの重要性が少しは伝わっているのかなと嬉しくなった瞬間である。

伝えたい相矛盾するメッセージは、バランスよく伝えることが重要だと改めて感じた「と」であった。

やりたいことをやれ「と」人に迷惑をかけるな

上述した通り、常々、「人に迷惑をかけること以外であれば、何をやってもいいよ」と娘達に伝えている。それに対して、最近、口が達者になってきた娘たちは、「なんで?」と訊いてくる。「自分がされて嫌なことは、他の人も嫌だと思うでしょ。又は、お友達がケガをしちゃったら悲しいでしょ」と答えてみる。そうすると「じゃー、何でもじゃないじゃん」と娘達・・・屁理屈である。私も子供のころ両親との会話で同じような感じでしゃべっていた記憶がある。遺伝ですね・・・。

私が娘達に伝えたかった意図は、人に迷惑をかけないとういう前提条件の中で、やりたいことを何でもチャレンジしてみようという考えなのだが、なかなか娘達には伝わらないのである。

ところで、PFCでは、チームが効果的である為の要素としてベクトル・プロセス・ヒューマンの3要素が重要だと考えている。その中のベクトル(組織やチームの方向性)の中身としてはミッション・ビジョン・バリューズがある。バリューズ(価値観)とは、ミッションやビジョンを目指す上での行動基準、つまり、行動する上でのガードレールの様なものだ。

今回、そのガードレールが「人に迷惑をかけるな」と言うことになる。普段から、利他の精神を忘れるなと娘達に言っているので、我が家のバリューズにぶれはない。

この意図をどの様に娘達に伝えると深く理解してくれるのか。今回も、長女がお店屋さんを始めたことをきっかけに「論語と算盤」でアプローチしてみた。ある週末に、娘にこんな問いを投げてみた。「パパはお金持ちになりたいです!だからパパのお店からいっぱい商品を買って下さい。商品は高いけどパパは儲かるから、全然OK。あなたが損しても関係ないです!」と言うお店から買い物したい?又は、「パパは、皆さんが喜んでもらえるようなお菓子をそろえました。ぜひ買って下さい。他に欲しいものがあれば、パパにリクエストして下さいね」というお店はどうかな?どっちから買いたいと思う。長女は、パパにお金を払うからどっちもいやだなと趣旨とは違うことを言いつつも、「損するから初めのお店からは買わない。あとのお店の方が私の好きなものがありそうだから、そっちかな」と。私としては、我が意を得たり。そこで、長女に、「そーだよね。なんかズルしそうなお店や信用できないところからは買わないよね。皆に買ってもらいたいのであれば信用されなきゃね。その為には、ズルや人の嫌なことをしちゃだめだね」。なぜか長女は自信満々に、私のお店はパパとママが喜ぶおつまみがいっぱいあるし、ズルはしてないから大丈夫だねと胸を張っていた。長女の頭を思いっきりなでてあげた。

上述やり取り聴いていた次女にも、「お友達と遊ぶ時も同じだよね。お友達の嫌がることやズルばかりしたら、もー遊ばないってお友達から言われるよね。信用されなければ、遊びたいお友達とも一緒に遊べなくなっちゃうよ。やりたいことが出来なくなっちゃうから、人の嫌なことはしない方がいいよね」と言ったところ、「自業自得」と次女がボソッと一言。それを聴いて思わず「その通り!」と大声を上げてしまった。

自分がやりたことを成功させる為には、信頼が必要。だからこそ、人に迷惑をかけずに、逆に喜んでもらえるように行動することが必須であることを少しは学んでもらえたかなと思った瞬間だった。 そして、バリューズ(行動基準)を明確にし、それに沿った対話をすることの大切さを改めて感じた。

Must(○○すべき)「と」Will(○○したい)

最後は、今までの「と」を実行する際にも紐づく「と」だと考えている。要は、パパやママが言っているからとりあえずやる(Must)ではなく、その行動に心(Will)が入っていることが重要だと考えている。

組織開発の面でも、変革を進める上で、制度や仕組み(ハード面)を構築する前に、まずは、社員の想いや考え(ソフト面)を吸い上げ、彼らの心に火を灯すことが重要だと考えている。箱だけ作って、そこに魂が入ってない状態は避けなければならない。子育ても全く同じだ。上述した通り、言葉では「ごめんね」と言っておいて、そこに心が入っていないのでは意味がない。

それでは、どの様にしてWillの入った行動へ促すことが出来るのか。キーワードは「納得感」だと私は考えている。その納得感を醸成させるためには・・・子育ても、組織開発も、同じところで悩むのである。

話は変わるが、小学校の石像で有名な二宮金次郎の言葉に「心田を耕す」というものがある。村の復興請負人である金次郎らしく、人の心を田んぼに例えて、「その田んぼ(人の心)を耕し、美田にするのは自分自身であること。他人にしてもらうものではない」と説いている。ただ、その前提として「皆が 田んぼ(自分の心)を持っているということを、ちゃんと認識し、それに感謝すべき」だと言っている。つまり、人の心は田んぼのようなもので、自分が好きなことだけして、自分の田んぼ(心)をほったらかしにすると、荒れ地になるし、毎日、しっかり(心の)手入れをすると 収穫の多い田んぼにもなる。そして、心をほったらかしにするか否かは自分自身の意識でどちらにでもなるとのこと。

ふと、この言葉をお思い出し、娘達に納得感を醸成する方法などを考える前に、パパである私の行動に心が入っているのか、つまり、パパである私の田んぼが荒れ地になっていないか内省することが重要だと気が付いた。いやーー、特に、最近、荒れ地だなー・・・。我が家は共働きである。ここ数か月、プロジェクトがピークを迎える妻の仕事は、時短勤務にも拘わらず遅くまで残業せざるおえない状況になっている(余談ではあるが、時短勤務なのに、いつまでも残業出来てしまうのは、リモートワークの弊害ではないかと感じている)。そんな中、私の方がスケジュール通り仕事を終えることが多いので、例えば、研修登壇後、子供たちのご飯を作り、お風呂などをサポートするなど、子供たちをケアする時間が多くなった。子供達と接する時間が多くなることはいいのだが、一日の疲れと、この後、やらなければ行けないことを鑑みて、どうしても、とりあえず予定通りに物事を進めて行きたい思いが強くなっていき、「あれやれ、これやれ」と指示ばかり。もちろん、この言葉には娘達を思う心は入っていない。一つ一つのタスクを早く終わらせるだけの言葉になっていた。また、娘が何か話をしようとすると「話はいいから、まずはランドセルを片付けて。そして、ご飯食べるよ!」「食べ終わったら、お風呂だよ!」。Must(すべき)の言葉ばかりで、私のWillもなければ、子供達のWill(子供たちが何をしたいのか、何を話したいのか)さえも蔑ろにしていた。

リーダーシップ研修や管理職研修などでは、まずは上司の皆さんがWill(こうしたいという想い)を持って、行動に移さないとね。メンバーは皆さんの思いと行動をしっかり観て、評価していますからね!と伝えている・・・。そんな私自身は、子供の前では、指示ばかりのダメ上司である。

今後は、私自身の行動のWillをしっかり言葉で伝えるとともに(その前に、Willの無い行動はしないように意識することですね)、前回執筆した「子育て体験記:心理的安全性をもたらすパパへの旅」の記事に記述した通り、娘たちのWillも引き出せるような問いかけと傾聴をしていきたいと思う。私自身、心の余裕を持ち、私の心田を耕すようにして行かなければ、娘達は付いてきてくれなくなると危機感を感じた。

そんな中、先日、絵を描いていた長女が座っている椅子に、私はぶつかってしまった。反射的に、「あ、ごめん」と言ったところ、長女から、「パパ、ただごめんって言っているだけでしょ。反省してる?」と、心にささるフィードバックをもらい、反射的に出てしまう、「ごめんね」や「ありがとう」にもWillを込めなければと、その難しさを改めて感じた。

人を変える前に、まずは自分の意識と行動を変えなければいけないと強く感じた「と」であった。

そういえば、この記事を書く際に、妻に、子供と接する時に意識していることってある?と訊いてみた。一言「怒鳴らないこと。だって意味ないじゃん。それより、話を聴く・共感することだよ。ね、パパ!」

・・・私のWillのない行動を見透かされていた感じである。

最後に

今回、3つの「と」を振り返り、各「と」を娘達と一緒に満たしていく為には、

①バランスよくメッセージを発信すること
②バリューズ(行動基準)を明確にし、それに沿った対話を絶やさないこ
③子供たちに体現してもらいたいことを、私自身が意識と行動を変容し体現すること

が重要だと感じ、我が家のパパ経営者として実行するべき方向性が見えてきた。

そして、子供たちの育成に関して「と」を両立する為に、まだまだ、色々な工夫や私自身の意識変容が必要だと実感した。だからこそ、企業の中で経営人材を育成すること(「と」に対して同時追求し、満足させることが出来る人材を育成すること)に、どれだけの労力や工夫が必要か改めて感じることが出来た。加えて、企業内の経営者は、この相矛盾する「と」が2つとは限らない。3つ4つの「と」(例えば、“顧客”と“株主”と“従業員”)を同時に満足させる必要がある。この様なサクセサーを育成する為に孤軍奮闘されている方々を、ぜひ、引き続きご支援させて頂きたいと思うこと、「と」、そこから我が家の子育てへのヒントも得たいと思う今日この頃である。

シニアコンサルタント 齋藤正幸