セミナーレポート:日本企業におけるDXの実態や成功のポイントは?

2021年3月3日に、「日本企業におけるDXとCDO~DXの推進とその中でCDOが果たす役割~」をウェブセミナーで開催しました。セミナーには、200名を超える方の参加があり、DXへの関心の高さが伺えました。

現在多くの企業でDXの取り組みが加速する中、進め方や推進体制は各社各様です。本セミナーでは、日本企業におけるDXの実態を紹介し、成功に決定的影響を持つポイントを考察しました。

本稿では、後半のパネルディスカッション(一部は聴衆からの質疑応答)の部分のレポートをお届けします。パネルディスカッションの部では、昨年CDO Club Japanにより「Japan CDO of The Year 2020」を受賞された味の素株式会社 代表取締役 副社長執行役員 Chief Digital Officer(CDO)福士博司氏、そして松村 卓朗(PFC代表取締役)と、ファシリテーターを務める太田信之氏(OXYGY株式会社 パートナー アジア・パシフィック 代表)による鼎談が行われました。

事前に参加者の皆様からの質問を募りましたが、大別すると次の3つに整理できましたので3つを大問として設定し、さらにファシリテーターから投げかけられるサブ質問について話していく形で進みました。

1.CDOの役割は?
2.DX推進の難しさはどこにあり、推進の鍵は何か?
3.DX推進にあたり、風土変革はどう進めればよいか?

本レポートで、皆様がDXを進める上で重要論点に対する推進の示唆を提供出来れば光栄です。

1.CDOの役割は?

Q. CDOはデジタルに詳しくないとできないのか?

味の素・福士氏(以下、福士氏):デジタルの知識は必須ではなく、むしろ問題なのは変革の経験者が少ないことだ。変えていくという意志の方が重要だ。

PFC松村(以下、松村):CDOの話の前に、デジタル人材の話から。日本の構造的な問題は、デジタル人材が企業の外(SIer等)にいることだ。外にいると、顧客企業から言われたことを言われた通りに作るだけになる。企業の側も、SIerに丸投げになりがち。これでは絶対にイノベーションは起きない。これからは、自社でデジタル人材をもっと雇って活躍できる場所を作る必要がある。CDOは、デジタルに詳しいかどうかより、こうした人材に活躍してもらってイノベーションを起こすことが最も大切な役割と思う。 経営陣も、デジタルに精通している必要はないが、関心は必要だ。ITやデジタルには関心がなく、DXは任せっきりということはよく聞く。

Q. 変革の経験があっても、外からCDOを招いた場合、日本の大手企業では活躍を期待するのは難しいのではないか?あるいは外部の人だからできる側面もあるのか?

福士氏:取締役レベルで外から連れてきたほうがいい。特に「大胆なデジタル変革をやる」ということが取締会レベルで明確に決定しているのであれば、社外から招へいするとうまくいく。名前はあげられないが、そういうことで成功している企業もある。取締役会がガバナンスを利かせられれば、外部から招へいしてもうまく行く。
一方で、取締役会レベルで決定できていないと、葛藤が起きる。社内から出さざるを得ない。
また、この会社の目指すところはどこかを明確にすることも大事。ミッションが明確になっていると、「自社だけでは実現できない」「どこと組んだらうまくいくか」などを考えられるようなミッション経営ができる。外部の人が内側に入ってきてもうまくいくようになる。

2.DX推進の難しさはどこにあり、推進の鍵は何か??

Q. DX推進における日本企業特有の難しさはどこにあるか?

福士氏:日本企業は流動性がないので、組織文化を変えるのが難しい。社外の人を招いた場合、「外の人に変えられるのはいやだ」という抵抗が起きやすい。それであれば自ら変わろうというほうが良い。中から「組織を破壊してやる」といった姿勢もよくない。企業のミッションから考えて、それを達成するためにはこう変わらないといけない。というように自発的なリーダーシップを促すのが日本企業に一番合っている。

松村:日本企業は、外部人材が活躍する組織文化を経験したことがないので、そこが難しさのひとつではないか。CDOのみならず、デジタル人材も外から連れてこないといけない。外の人たちと連携していかないとDXが進まない。 「しがらみをこわす」という観点からいうと、外からCDOのほうが、やりやすいかもしれない。もちろん軋轢は起きるが、そのほうが変化が起きやすい場合もある。この軋轢を福士さんのような社内の人がチャンピオンとして擁護できると良いだろう。

Q. DXは社会全体の課題認識。一企業でできることには限界があるが、競合他社との関係はどうとらえたらいいか?

福士氏:2点ある。
一つめは、競合の概念が変わること。競合はこれまでは同業他社だったが、これからはあらゆる異業種・団体が競合になってくる。一方で、むしろ、同業他社は競合ではなく、未来の社会を実現するための協業相手という考えも必要になる。
二つめは、一つめと関連するが、自分たちの強みを明確にすることが必要。どの会社も弱い会社とは組みたがらない。オリジナリティのある企業と組みたがる。強みがなければ競合からも相手にされないし協業の声もかからない。

Q. DXを推進するにあたって、どのくらい先をみて計算してやってきたのか?勝算があったのか?

福士氏:足元を見るのではなく、未来社会はどうなっているのか、未来の社会課題はどうなっているのかを考えて行かないと、なかなか動けない。われわれはその方向に行く、という意思決定と、そのために日々のオペレーションをこう変える、という考え方を統一する必要があり、それが統一されていないと勝てない。バラバラだと勝算はない。

Q. 日本企業がDXの変革を行う中で、必要なリーダーの資質とは?変革の中でどんな試みや課題の実例があるか?

松村:DXに限らず、変革がうまくいった事例をきくと、自己否定がカギだ。「自ら自分の業界を破壊しよう」というくらいの考え方をして、変革の起爆剤になれることがリーダーの資質として必要ではないか。
もう一つ、「未来の社会課題」を考え抜けることも必要な資質だ。目の前の自分の会社の成長から目的を設定すると、「結局何のために変革をやるんだったっけ?」と元に戻ってしまう。うまくいった事例では、「社会の未来」を考え抜く時間、そのために自社が何をできるかを考え抜く時間をとって、ブレない目的を設定し、社内に納得感が生じている。
社会の課題を解決するから結果として自社の利益も増えるという考え方が必要だ。新しい時代になり会社自体を変革しようというとき、自分たちの固定概念も新しいものに変えていく必要がある。変革のリーダーには、それを引っ張っていく資質が必要だ。

福士氏:時々変革をさして「破壊と創造」というが破壊というと嫌がられる。おのおのが自立して、ネットワークをいかに作るか。どうやって意思決定をしていくかという話だと入りやすい。

3.DX推進にあたり、風土変革はどう進めればよいか?

Q. 風土を変えるなんてできるのか?それとも変革を進めめていった結果、風土が変わるのか?

福士氏:自社の場合は、変革するというトップの意志があった。結果は後からついてきた。
とはいっても、変革は容易ではない。トップは何年も毎日おなじことを言い続け、やり続けなければならない。

Q. DXの重要性については、特に若手から賛同を得ることが多い。若手から「何から始めればよいか」と相談を受けたとき、どのようにアドバイスをしたらよいだろうか?

福士氏:自分も入社以来、会社はこんなことでいいのか!と毎日思ってきた。そういう問題意識を感じている若者を、大切にしないといけない。立てついてくる若者に対して聞く耳をもつべき。若手の方も言うだけではなく、勉強してチャレンジするスピリットを持ち続けてほしい。そうするとそういうカルチャーを持つ会社ができてくる。社内の勉強会から業界の勉強会につながったりするかもしれない。自社でもデータサイエンティスト育成などに取り組んでいるが、それだけでなくファーストペンギンを手伝うようなことも必要だ。ペンギンが15%ぐらいになったら、会社が変わっていく。

松村:そもそも「若手」という言葉をなくし、認識を変えたほうがいい。若手と言って出てくる人達は30代前半のことが多いが、彼らは既に10年選手で、豊富に知見も経験も有している。かつ若くて頭が柔らかいので、熟練層にはない新たなアイデアを出せる。この人たちを活かす組織作りをすべき。一方で、既存の組織の中だとまだ“権限”は持っていないので、できることが限られる。権限をもっていて話しがわかる人、福士さんのような方とのコネクションを持って、上手に活用して様々なことを試みていくことが必要。
DXで、社外のスタートアップベンチャーなどとつきあっていくことになったら、出てくる相手の役職者が20代であることに大いに刺激を受けることも増えるだろう。そうした経験が風土変革も推進できる。