人と組織のニューノーマル(新常態) ~Withウイルス時代の組織開発・人材開発の論点7:「DX」とニューノーマル

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コロナ禍はDXを進める千載一遇のチャンス

コロナ禍によって私達には多くの苦難がもたらされ、今なお格闘中なわけだが、ここでは“ポジティブな”面にも目を向けたい。
そのうちの一つは、DXなどの変革を進めるビッグチャンスをもたらしてくれたことと言えるのではないだろうか。

「働き方改革」が絶賛推進中

私達はコロナ禍で、実に様々な変化を余儀なくされた。
働き方一つとっても、どの企業でも「働き方改革」を絶賛推進中のはずだ。
まずはリモートワークの導入。移動などの無駄な時間(それまでは、移動が無駄だとすら思ってはいなかったが)は極力排除できる方向に舵が切られた。会社に来てその場にいるというだけで存在価値を放っていた人があぶり出され、終身雇用は完全に終結の時を迎えた。
評価制度も、成果による評価ができなければモチベーションの維持・向上ができないと、メンバーシップ型からジョブ型への転換がなされているところだろう。
副業や兼業などを導入する企業も増え、働き方の多様性もこれから大いに進められようとしている。

しかし、考えてみれば、これらのテーマは、コロナ禍の前から存在していたもので、なかなか進まなかっただけだ。「変えなければ、変わらなければ」と言っているうちに、じりじりと失われた何十年を過ごしてしまった企業も少なくないと言えば言い過ぎだろうか。

コロナ禍で方向転換が起きたわけではない

即ち、コロナ禍によって起きた変化は、決して方向転換ということではない。加速なのだ。コロナの前と後で、決してテーマが変わったわけでも、新たなテーマが生まれたわけでもないのだ。

そして、コロナ禍で、これまではなかなか進まなかったことが進んだということには大いに着目すべきだ。色々なしがらみや、抵抗勢力、危機感のなさ等、変革を進ませない要因はいくらでもあったわけだが、それらすべてを一気に強制的に変えられる機会が訪れたと考えるべきなのかもしれない。

DXにしても、これまでなかなか思うように進まなかった・進められなかったという企業は、少なくないのではないか。コロナ禍によって、これまで拠って立っていた前提がくつがえり、これまで機能していた様々なものが崩壊し、「これまでの進め方ではうまくいかない」という機運や危機感を醸成しやすい状況が生まれた。今こそ、DXを進める千載一遇のチャンスと捉えるべきだろう。

DXの要諦はX(変革)であり、実は人事・人材開発が主導できる/すべきことが極めて多い

ところで皆さんの企業では、DXにはどのような体制で取り組んでおられるだろうか。経営層はどのようなリーダーシップを発揮しているだろうか。下から報告が上がってくるのを待つのではなく、例えばCDOを置き、経営がDXを主導するような体制が取れているだろうか。

そして、人事や人材開発はどのようにDXに関与しているだろうか。「人事領域のDXが進んでいない」といった指摘を受けて、全社の一部門として必死になって進めようとするだけではなく、DX全体を推進する旗振り役となって変革の主導的役割を果たせているだろうか。

正直言って私達も、数年前にDXという言葉を聞いたとき、そして各企業でDXへの取組みが始まったときにも、それはあくまでデジタル領域の専門家がご支援する領域であって、「People Focus Consulting」にはお手伝いできることはほとんどないのではないかと思ったので、静観していた。

しかし、クライアントの皆さんから様々なご相談を受けるにつれて、むしろ「People Focus Consulting」だからこそ、できる/すべきことが極めて多いということに気づいた。

その理由を整理すると、次の三点になる。

1)DXには意識・行動変容をもたらすプログラムの導入が欠かせない

まず第一に、考えてみれば当然のことなのだが、DXの本質は、「X(変革)」にあるということだ。
「変革」ということであれば、どのようなものであれ、経営が主導し、人事や人材開発が組織や意識・行動の変容をもたらすための実質的なプログラムを導入・運営して前に進めていくということが鍵となる。これまで、様々なテーマの変革推進をご支援してきた経験や知見が大いに活きるはずだ。

2)組織風土改革につながる

第二に、クライアントの皆さんに困っていることを具体的に伺ってみると、「人と組織」の要素が極めて大きいということだ。

多くの企業の皆さんが、CDO探しから始まって、DXを推進する人材不足に悩んでいる様子が伺える。また、DX推進で躓いている部分を伺っていくと、多くの場合、つまるところ組織風土の問題に帰する。それもそのはずで、変革の要諦は、目に見えるハードの部分のみならず、目に見えないソフトの部分にあるので、両輪を紐づけて進めることができるかどうかにかかる。

3)人材のエンパワーメント等が欠かせない

そして第三に、DXの成功要因が明らかになるにつれ、これまで「人事・人材開発が取り組んできた領域」の成果にかかっている、従ってこの領域での取組みがますます求められることが分かってきたことだ。

例えば、富士通が、DXで成果をあげた企業とそうでない企業を分析し、DXの成功要因を導いている。

DXで成果をあげるために必要な組織能力として明らかにした「デジタル・マッスル」は次の6項目だ。DXを成功に導くためには、継続的に組織としてこれらを鍛えていく必要があるとしている。

リーダーシップ:CEOの優先課題としてDXに取り組む

エコシステム:パートナーと共に、トラステッドなエコシステムを構築(様々なパートナーとの信頼関係構築)

人材のエンパワーメント:必要なスキルを持つ人材を育成し、成長の機会を与える

アジャイルな文化:イノベーションに挑戦し、変化に対応する文化の醸成

ビジネスとの融合:デジタル技術をビジネスプロセスに組み込み駆動する

データからの価値創出:セキュリティを確保し、信頼性のあるデータからビジネス成果を生みだす

6項目中、デジタルそのものの知見に関するものは1項目であり、実に5項目は、人事・人材開発が主導すべき領域と言っても過言ではない。

変革推進の鍵である、WHYとWHATとHOWをサポート

では、一体どのようにDXの推進をご支援するのが効果的と考えているのか、私達の現時点での考えの一端を簡単に示そうと思う。

DXを進めている企業に、DXの推進上、どのようなことに困っているか・躓いているか・支援が必要か等を具体的に聞いてみると、私達にとって大変興味深いことが分かった。それは、これまで私たちがご支援してきた様々な変革と共通点が多いということだ。つまり、DXにおいても、他の変革と同じようなことで困っている・躓いている、あるいは支援が必要であると、皆さんが言っているのだ。

例えば、我々が変革プランの要諦として認識し、とりわけ、変革支援の初期の段階で注力して行うことのひとつに「WHY・WHAT・HOW」がある。こう書くと“変革プランの要諦”などと言うまでもない、あたりまえのことのように思えるが、これらがうまくいっていないときほど、原点に立ち戻ってみることが意外と有益だ。

変革プランの要諦1:「WHY」を明確にする

まず、当然のことながら、変革には目的がある。経営陣をはじめ、変革を主導する者は皆、明確な目的を共通に抱く必要がある。そして、社員皆がそれをきちんと理解する必要がある。目的が明確になっていなければ、あるいは、その目的が社員に明確に共有されていなければ、変革はフォーカスを失い、早晩迷走を始めるということはよくあることだ。

かつて、ある企業の人事責任者から伺った話。「働き方改革」全盛の頃、この企業は変革を先んじて進めてマスコミにもよく取り上げられていたので、多くの企業がこの方の元にも教えを請いにやってきたが、「働き方改革を行う、御社の真の目的は何ですか?」と質問すると、明確には答えられない企業ばかりだったので辟易したということだ。

DXにおいても、あらためて何のためにDXを行うのかと問うと、「生き残れないから」とか「効率化と新規事業創出のため」とか、その企業ならではの目的を考え抜けていない返答が返ってくることも少なくない。経営陣によってそれぞれ答えが異なる場合もある。それでは社員の心を動かせない。

変革プランの要諦2:WHATを明確にする

続いて、変革の全体像を描くことをご支援することが少なくないが、あらためて全体像の重要性に触れておきたい。DXにおいては、全体像の中で、各種プロジェクトの位置づけを明確にすることが最も肝要だ。私達がご支援する際には、既に多くのタスクフォースが動いていることが普通である。もちろん、様々な取組みや試みがスタートしていること自体は、何ら問題ではない。むしろ、あらゆるプランが整うまで、何の取組みや試みも行わないということの方が問題だろう。

ただ、どの取組みは何のために行っているのか、そして、DX全体の目的に照らすとどの取組みの成否のインパクトが大きいのか、経営が見るべき視点でそれぞれのPJや取組みの位置づけを明確にすることは容易ではない。

常に「全体感」を失わず整理・統合しながら推進の道標を示すことは、部門横断で進めなければならないDXには不可欠だ。また、ビジネスへのインパクトや意味合いに「翻訳」できることも欠かせない。これらを伴ってはじめて、全体像を描き、位置づけを明らかにしたと言えるはずだ。

変革プランの要諦3:HOWを明確にする

さらに、変革を真に進めるためには、それを実現させるための“マインド”セットと“スキル”セットを比較的早い段階で実装しなければいけないはずだ。

働き方改革で言えば、「部下に残業させるな」とだけ会社が言っても、部下に残業させないようにするためのマネジャーの“マインド”セットと“スキル”セットを同時に実装させることができなかった企業では、現場が混乱するだけだった。

DXで言えば、デジタルを活用して効率化を図ろう、ビジネスモデルを再構築しよう、新規事業を考えよう、としているが、それらを進めるための基本的なマインドとスキルは実装できているだろうか。その前に、必要なマインドとスキルは明確になっているだろうか。

変革を推進するというのは、具体的なマインドやスキルに落とし、その醸成や向上を図ることと考えるのがスムーズだ。

CDOとは、Chief Digital Officerではなく、“Chief DX Officer”とすべき

こうした変革の先頭に立つ必要があるのがCDOだ。

「CEOの優先課題としてDXに取り組む」ことがDXの成功要因の一つとして挙げられていることは先述したし、また、そのためにCDOを設置しDX推進の先導役を果たしてもらおうと考えている企業は多いだろう。

では今、どのくらいの企業でCDOが設置され、DX推進の先頭に立っているのだろうか。

例えばアメリカでは、CDOはデジタルトランスフォーメーションの担い手として2013年頃からその設置が本格化し、2014年には1000名、2015年には2000名と倍々で増えていったと言われている。(「デジタルトランスフォーメーションの実際」日経BP社)

2018年に行われたPwCのサーベイでは、調査対象となったグローバル2,500社の上場企業のうち21%がCDO職を設置しているという。(https://www.strategy-business.com/blog/Have-we-reached-peak-chief-digital-officer?gko=2443a

しかし、日本に目を転じてみると、CDOを設けている企業の割合は、2015年は0%、2016年で7%だったが、2019年末の調査で、CDOは専任・兼任合わせても、わずかに9.1%と10%にも満たない様相だ(ITメディアエンタープライズ https://www.msn.com/ja-jp/news/techandscience

クライアントの皆さんと話していると、多くの企業の皆さんが今、CDO探しに力を注いでいることが分かるが、それもそのはずだ。需要に対して供給が追い付いていない印象は否めない。

CDOに求められる役割は?

ところで、皆さんの組織では、CDOに求められる役割は明確だろうか。

お付き合いのあるクライアントの皆様にCDOに求める役割をヒアリングしてみると、次のようになった。つまるところ「変革」というキーワードが通底している。

1.ビジネスモデルの再構築(単にデジタルの導入にとどまらず、デジタルを活用した新たな価値創造によって生き残れる新たなビジネスモデルを構築する)

2.既存組織の改革(人材の獲得、組織の再編、社員働き方や意識変容などを、具体的に主導する)

3.全社的な変革の推進(様々なデジタル化の動きやプロジェクトなどを、全体感をもって推進する)

DXのXは“トランスフォーメーション(変革)”なのだから、最初は至極当然と思ったのだが、しかし、あらためて考えてみれば、CDOとは、チーフ・デジタル・オフィサー(デジタル最高責任者)であって、どこにも“トランスフォーメーション”は出てこない。ならば今後は、CDOとは、チーフ・DX・オフィサーとし、DX(変革)を進める人と定義した方が、求められる役割と一致し、すっきりすると思うのは私だけだろうか。(PFC代表取締役松村卓朗)


この度、CDO Club Japanの選考委員会より、昨年2020年の「Japan CDO of The Year 2020」(CDO大賞)に選出された、味の素 代表取締役 副社長執行役員 CDOの福士 博司氏と、PFC代表取締役松村卓朗が、講演とトークイベントでご一緒させていただくことになりました。

具体的なCDOの役割や、実際にDXを推進する上での苦労など、CDOの設置を検討している皆様やDXの推進のヒントを得たいという皆様に、有益な情報を引き出してご提供したいと考えています。

「日本企業におけるDXとCDOーDXの推進とその中でCDOが果たす役割ー」
日時:2021年3月3日(水) 16:00~18:00
会場:Zoom を使用したオンラインセミナーです。
詳細・お申込みはこちら


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