今だからこそ、家族で共同体的要素の強化に挑戦:Part 1

7歳と6歳の子供がいる中でのリモートワーク

われわれPFCでは、新時代の組織運営においては、「目に見えない」ものを扱う組織開発の重要性がより一層増すということを提言している。(人と組織のニューノーマル(新常態) ~Withウイルス時代の組織開発・人材開発の論点~

しかし、企業内組織への問題提起や何がニューノーマルとなり得るかの方向性などを提示してきた一方で、在宅勤務の中で、家族との向き合い方や接し方を変えることの重要性に関してはあまり触れてこなかった。個人の置かれた環境により、リモートワークの成否が分かれてくる傾向があると前の記事ではお伝えした。個人の置かれた状況は、「家の環境」と、「(小さい)子供の有無」の2つの軸に分解して定義したものだ。この定義に基づくと、私は、まさに仕事をする上で両軸ともマイナスな環境下でリモートワークを行ってきた。

家族構成としては、フルタイムで働いている妻(私と同様に在宅勤務)、7歳(小学2年)と6歳(保育園)の娘。個室はなく、私はリビング又はダイニング(場合によっては、机も椅子もない寝室)で仕事をしている。

この様な状況下だからこそ、改めて「家族の重要性」にフォーカスし、組織開発コンサルタントとして家族と一緒に共同体的要素(「目に見えない情報やつながり」)を強化することに挑戦してみた。

小さい子供が家におり、且つ、まだ在宅勤務が続く環境下にいる方へ何らかのヒントをお伝え出来ればと思い、今回、「緊急事態宣言」が発令され、二人の子供たちも終日在宅という環境下の中での、私の体験記をご紹介することにした。

家族を強い「チーム」へと成長させる

相乗効果が生まれている人の集合体を「チーム」と定義するのならば、人の集合体である家族も強い「チーム」へと成長することができるはずだ。そこで、PFCが提唱しているチーム作りの基本である「ベクトル」「プロセス」「ヒューマン」の3要素を意識して、家族の共同体的要素(「目に見えない情報やつながり」)の強化を始めた。

「ベクトル」の強化

「ベクトル」は方向性だ。強いチームを作るには、チームの目標や方針を明確に定め、それをメンバー間で共有することが欠かせない。

「なぜ」の共有と対話

「緊急事態宣言」が出て、3月上旬から5月末まで小学校も保育園も休園。利用していた学童保育はもちろん活用できない状況。「学校に行かなくていいの!」「わー、パパもママもお家にいる」「あそぼ!あそぼ!」とPCを開く間もなく二人の子供たちがすり寄ってくる。「パパもママも仕事だから二人で遊んでいてね」と言っても、子供たちからしてみると「家にいる=パパ・ママは休日」の感覚なので、数分経つと、また「パパ、仕事終わった?」と話してくる。

そこで、家族四人で、「なぜ、パパとママは、これから家で仕事をすることになったのか」「なぜ、子供たちは学校が休みなのか」を、寝る前に、電気を消して家族四人でベットの上で川の字になって対話した。子供の「なぜなぜ」質問に夫婦で答えつつ、わからないことがあれば、「明日、皆で調べてみよう」などと話しながら、気づいたら子供たちは寝ている。その様な対話を初めの一か月間に2~3回程度行った。極力、皆がリラックスした状態で、且つ、子供たちを説得するのではなく、納得感を醸成するように質問に対して皆で答えるように意識した。

もちろん、子供なので、日中「パパ、遊ぼう」と何度か言ってくる場面もあった。その際は、「この間、皆で話したよね。コロナからお家を守る為に外にでないようにして、今日もお家で仕事をしているんだ。明日は、土曜だから、明日は遊べるからね」と、週末は遊べるよと希望を見せつつ、子供たちへ「なぜ」を繰り返し伝えることをした。そのお陰なのか下の娘は、「私は、コロナをやっつける警察になる!」と、お医者さんではないのかなとツッコミをいれたくなるような、ほっこりするようなコメントを言いつつ、当初に比べて、そこまで「遊ぼう」のわがままは言わなくなった。

「なりたい姿」の効力

保育園が長期閉園になる為、6歳の娘は保育園の最後日に、ある手帳を作成し持って帰ってきた。それは「素敵なプリンセスになる為の手帳」だった。「素敵なプリンセス」は、保育園の先生が「どんなお姉さんになりたいの?」の問いかけから、娘が自分で考えて決めたタイトル。また、「素敵なプリンセスになる為に、長いお休みの間、何をすればいいかな?」の問いを受けて、いくつか約束事を手帳に書いてきた。私も妻も、なりたい姿と約束事を娘と一緒に確認し支援することを約束した(余談だが、久しぶりに指切りげんまんをした)。

そこからの娘の変化には、正直驚いた。約束事の一つに「夜の9時に寝る」があったのだが、8時55分になったらトイレにいき、ベッドへ向かうことを、一度も約束を破ることなくやり続けたのである。自分から、「今、何時?」「8時55分になったら教えてね」と自主的に動いていた。

「帰宅時には手を洗う」の約束事もあった。この約束はうっかり忘れてしまうこともあったが、私が「素敵なプリンセスは、お家に帰ってきたら何するんだっけ?」と尋ねると、ハッと気が付き自分で手洗いに行ってくれた。改めて、目指したい姿やその為の行動を自分で描くことの重要性とその効力を娘から学んだ瞬間だった。

「プロセス」の強化

強いチームを作るために必要な二つ目の要素が「プロセス」だ。「プロセス」を強化するには、チームとしての仕事の進め方、すなわち業務の手順や役割分担、あるいはルールや約束事を明確にし共有することが必要になってくる。そしてその第一歩として必要になるのが現状把握だ。会社の業務でいえば業務の進捗や成果の状況を確認することにあたる。

「心」の現状把握

これは、家族であれば役割分担やスケジュールの把握(今日は、誰が、何をするのか。子供の相手はどちらが、どのくらいできるのか)にあたる。私の家では、遊ぶ場所や勉強する場所、そして、仕事をする場所をその日の朝に仕事の状況を鑑みて決めていた。

このように家で仕事を円滑に実施する為の現状把握を行う一方で、今回、挑戦したのが、特に子供たちの「心」の現状把握だ。外で遊ぶこともできず、お友達とも会えず、家にいるけどパパやママは仕事で遊んでくれない。この様な状況下でも、子供達には「心」も「体」も健康であり続けて欲しいと願っている。

その為、起床時と就寝時にこの様な声がけを始めた。朝は、子供たちが起きてきたら、私の方から「おはよ!今日は、元気かな??」「今日は何するの?」と笑顔で訊くようにした。普段と変わりなければ、子供達から「おはよ。元気だよ」や「ごはん、食べたい、おなか減った」など、元気な言葉が聞けるが。たまに、「・・・ぎゅーって(ハグ)して」と甘えてくる時や、ぐずぐずと寝起きが悪い時は、「何か怖い夢を見た?」「体調悪いの?」と状況を確認しつつ、その日の娘の動向を普段より気を付けてみるようにした。また、就寝時には、妻が子供たちを寝かしつけるので「今日、一番楽しかったことは何?」と訊くようにしている。たまに、楽しかったことを話しているうちに子供が興奮して眠気が吹き飛ぶなんてこともあったが、心身共に健康な証拠だと思うので良しとしている。逆に、特にお姉ちゃんの方が「今日は、楽しいことは何もなかった・・・」とコメントすることが複数回あり、そんな日の夜は、妻と次の日の作戦会議をひらいていた。お陰様で今に至るまで、家族皆、心も体も元気に過ごしている。ちなみに、妻の心の現状把握は・・・現状、習慣化出来ていない。今後の課題である。

「小さい成功体験」を回し自信をつけさせる

先ほど、お姉ちゃんがネガティブな発言をすることがあると書いたが。少し自分に自信がないのではないかと心配してしまうことが、今までもあった。そこで、今回、一日中家にいるからこそ、自分で1日のスケジュールを作成させて、一つ一つスケジュール通りに(場合によっては、時間通りにいかなくても)決めたことをやり遂げたら褒めるようにした。

「いつまで」に「何をする」つまり小さな目標設定させて、やり遂げたら、その努力をほめる、そして、次の目標に向かって鼓舞する。このサイクルを回せるように、スケジュール作りを朝食後の日課にした。もちろん、子供の計画なのでかなり大雑把な計画だ。例えば、午前中にオンライン学習をする・漢字の勉強する、午後は、ゲームを1時間する、その後、自由に遊ぶ時間+おやつ、5時になったら九九の練習を夕飯の前までに終わらせる。このくらいの内容だが、時間を意識しながら、子供ならではの努力をしていた(特に、ゲームを1時間で終わらせることに苦労していた)。

脳科学で有名な澤口俊之先生の著書『子どもの脳がぐんぐん育つ「やる気脳」を育てる』の中で、上述の様な好循環を回すことによって、脳内の伝達物質で、「やる気」を増幅するドーパミンが繰り返し出続けることになり、やる気回路が出来上がると書かれている。また、その努力をほめられることによって「やり抜く力」が培われ、そこから自信や決断力がつくと言われている。

小さな目標をやり遂げたという成功体験を回し続ける工夫は、実は今でも行っている。週末しかできないが、家族の予定がない時は、「今日は何をする?予定を立てて皆でやってみよう!」と子供たちに1日のプランを立てさせるのだ。そして、まずはプランが出来上がったことを褒めるところからスタートしている。

余談だが、お姉ちゃんは、私に叱られた時のインパクトが強いらしく、褒められたことはあまり覚えていないということが、今回の娘との対話からわかった。その為、最近では、褒めた時のインパクトを出す為に、ハグして大袈裟に褒めている。本人はまんざらでもなさそうだ。上述の循環を回すことによって、娘の好きな褒められ方も知ることができた。

「ヒューマン」の強化

強いチームを作るために必要な3つ目の要素「ヒューマン」は、そのチームの目的を果たすために、必要なスキルや能力を持つメンバーでチームを構成するということだ。

「ポジティブ」マインドセットを心がける

林成之先生の『脳に悪い7つの習慣』(幻冬舎)では、「絶対に出来ると思って前向きに取り組んだ方が、脳はパフォーマンスを発揮できる」と言っている。逆に、「無理だ」「出来ない」などは脳にとって否定語になるので、いつまでたっても出来ない言い訳しか考えることができず思考が深まらないとのこと。

「緊急事態宣言」だからこそ、これを機に新たなことをチャレンジしようと思うことが大切であり、その雰囲気を作る為にも、家族皆がポジティブな気持ちをもつことが必要だと感じた。まず家庭内の何を変えればいいのか?・・・自分自身だ。私(パパ)である。子供は親の鏡と言う。子供は、親の行動から考え方まで真似て、学ぶ。

余談だが、ある時、お姉ちゃんが、妹を、鬼のような形相で怒鳴っていた。私も見ていたので、妹に非があることは否めない。しかし、ここまで威圧的に怒っていては効果がないと思い仲裁に入った。そこでお姉ちゃんから一言「パパだってそーじゃん(同じように怖い顔で怒鳴っているじゃん)」。お姉ちゃんには、叱っている時の私の姿がそのように見えているということだ。ショックを受けた私は、大きな声で怒鳴らないように、「怒鳴り豚貯金箱」を作り、怒鳴った場合には、その貯金箱へ500円入れることを家族に宣言した。私の怒鳴る頻度が少なくなるにつれて、娘の顔が穏やかになり、大きな声で怒鳴ることが少なくなってきたことには本当に驚いた。

本題へ戻ろう。
1日中、家族と一緒にいるからこそ、私が、物事を前向きにとらえ、ポジティブに立ち振る舞うことを家族に見せることが必要だと考えた。具体的には、まず、「面倒くさい」「わからない」「難しい」というネガティブな言葉を言わないように心がけた。もちろん、上述の言葉を言わないと家族へも宣言した。その為、「パパ、面倒くさいって言っちゃだめだよ」「今、難しいって言った」と娘からフィードバックもらえるようになった。もちろん、娘たちが言った場合は、私がフィードバックする。その様な状態が今でも続いている。

一方で、それらの言葉を言わない代わりに「何か手はある。考えろ。考えろ。」を口癖にするようにした。今では、娘の方から、「パパ、私、ちゃんと考えているでしょ」と、どや顔で言ってくることが多くなった。また、「パパ、ちゃんと考えてる?」と厳しい言葉をもらうこともある。

「当たり前」に動じない子供の「なぜ なぜ?」から学ぶ

ポジティブマインドセットを口癖から変えることに加えて、今までの「当たり前」を前向きに考え直すことにもチャレンジしている。そのきっかけになったのが、娘たちの「なぜ?なぜ?」攻撃だ。テレビを観ていても、本を読んでいる時も、わからなければ「なぜ?」「なんで?」と頻繁に聴いてくる。ある時、お客様とオンライン会議があった際、娘が自分もPCに映りたいと言ってきた。とりあえず「映っちゃダメだよ」と言うと、さっそく「なんで?」。邪魔になるから、迷惑だからと伝えると、「静かにしているからいいよね。」子供の方が一枚上手だ。その時、お客様の方から、「実は、うちも子供が横にいるんですよ。抱っこして会議してもいいですか?」と提案があった。もちろん、そのお客様との信頼関係があったからというのもあるが、結果、子供も参加して、和やかな雰囲気の中、会議を進めることができた。その際に反省したことは、「子供は邪魔」という思い込みがあった為、会議の時に子供がいると困るんだよな、どうすればいいんだ、と狭い視野でネガティブに悩んでいたことだった。改めて「なぜ子供が会議に映ってはいけないのだろ?」と考え直し、かつポジティブに、子供が一緒に会議に参加してもいいのではないか、何かメリットがあるのではないかと、自分の当たり前を前向きに考え直す機会になった。

1日中、子供と一緒だったからこそ、私たちが持つ「当たり前」に子供たちが「なぜ?なぜ?」とクリティカルに突っ込んでくる。今では、(この忙しい時に・・)ではなく、可能な限り「なぜ?なぜ?」を一緒に考えるようにしている。それにより、何か予想しなかったことがあっても、前向きに一緒に考える雰囲気が家族の中で少しずつ醸成されてきている。

最後に

今も共同体として家族のチームビルディングに引き続き挑戦している。そして、目に見えない家族のきずなを強固にする為に、まずは、私自身の意識と行動が変わらないといけないことに改めて気づかされた。

『子供が勉強好きになる子育て』(著者:篠原菊紀)では開口一番、「親が勉強好きにならなければ、子供は勉強好きにならない」と言っている。自分が嫌なことを、子供にやりなさいと言っても、「パパだってやってないよね」で終わることは容易に想像できます。だからこそ、まずは自分。

また、私たち夫婦は「娘たちが楽しい未来を自分たちで造れるようになる」というビジョンを持っている。まだまだ、Covid-19の影響でどの様な状態になるのかわからない状態で、今まで以上に、仕事をしている姿を娘に観られる機会が多くなるかもしれない。だからこそ、今も、楽しそうに仕事をしている姿を見せ、パパやママの仕事が誰を助けているのか、子供の「なぜ?なぜ?」攻撃を受けながら伝えるように心がけている。

仕事の愚痴や疲労感ばかりを娘に見せて、「仕事って辛いもの、楽しくないんだ」と思われて、娘達のワクワクする未来を潰したくはないので。

そして、家族と一緒にいられる時間が多くなったことを「ちょうどよかった」とポジティブにとらえて、「見えない情報やつながり」を更に強固にし、輝かし共同体への変容を家族皆で試みることを続けている。

(シニアコンサルタント 齋藤正幸)