人と組織のニューノーマル(新常態) ~Withウイルス時代の組織開発・人材開発の論点4「新入社員教育」のニューノーマル

不十分だった今年の新入社員教育

まずは、私達が聞いた、今年の新入社員教育に関する代表的な声を共有しておこう。

「例年、新人には入社後1ヶ月の導入研修をし、その後、職場に配属して半年間OJTを行い、半年後に1週間のフォロー研修をしています。しかし今年は、まず入社式からしてオンラインに切替えました。従って集合研修もすべて停止し、研修はオンライン実施となりました。人事部から就業規則などの説明を半日、その後各職場から簡単な業務の説明をしただけで、例年と比べると圧倒的に不十分だったと言わざるを得ません。」

「職場に放り込んだだけで、OJTも現場任せです。
例えば営業の場合、“トップセールスの先輩社員の同行経験を積むこと”が効果的なトレーニングになると考えましたが、トップセールスが必ずしも指導力に長けているとも限りません。先輩社員へのメンタートレーニングができなかった今年は、限界がありました。トップセールスが指導する時間を使った分、売上にも影響するわけで、研修費は節約できてもトータルではマイナスです。
また、特にコロナ禍で営業活動そのものもオンラインで行うなど大きく形を変えたため、先輩社員への同行自体もそこまで効果的には機能しなかったようです。オンライン商談では相手の反応などの情報量が少ないことに加え、やはり、同行の前後の移動時の先輩社員との対話が実は大きな教育効果をもたらしていたのだと思います。」

「実際に現場に配属されたものの、そこで何かを教えられるわけでもなく、仕事を振られるわけでもなく、ただ放置されている新入社員もいると聞きます。本当に気の毒です。ただ、会社自体が厳しい状況ですし、人事部にも余裕がなかったので、今年は運が悪かったと受け止めてもらうしかありません。
コロナが早期に終息することと、早く対面での新人教育を復活できることを祈るのみでしたが、どうやらこの状況はしばらく続くということを前提に考えなければならないようなので、来年の新人も含めて新人教育をどうするか思案しているところです。」

コロナ禍の新入社員教育は、雇用した企業のみならず社会の使命

コロナ禍で、多くの人がこれまでとは大きく異なる働き方への対応を、好むと好まざるとに関わらず強いられることとなった。多くの人は、新たに求められた働き方に適応しながらも、まだまだ不安や戸惑いの中にいることだろう。しかし、少なくともコロナ禍前に社会人経験を踏めている以上、新入社員と比べるとまだましではないか。コロナ禍の中はじめて社会に出て、極めて大きな不安の中で、コロナ禍による変化によって最も大きな影響を受けているのが、今年の新入社員だ。

多くの日本企業は、経験・スキルがない新卒者を一括採用し、企業の中で長期間かけて育成する。しかし、今年は3月に緊急事態宣言が発せられて、コロナ対策で人事部がてんてこ舞いの中すぐに4月を迎えたため、入社式も延期かオンライン実施に切り替わり、以降の研修も期間短縮かあるいは休止に追い込まれた企業も少なくない。オンラインやE-Learningでの研修に切替えて実施した企業も、準備不足ということもあいまって、例年通りの教育効果を実現することができなかったという話もよく聞いた。そして、現場に配属されてOJTに入ってからは、ただでさえ上司がリモートで部下とコミュニケーションすることに慣れていないことから、今年の新入社員は“放置状態”に置かれているといった声もよく聞こえてきた。

今年の新入社員には、あらためて何等かの補足トレーニングを施し、精神面のケアをし離職を防ぐことや、必要な知識教育を行ってOJTの効果を最大限高めることなどが必要だろう。
しかし、当然今年の新入社員だけに目をやっているわけにはいかない。半年後には、来年の新入社員が入社するのだ。今年の経験を踏まえて、今年の新入社員にはできなかったことを、来年の新入社員には是非提供してほしいと願う。

今年(2020年)の新入社員は、3月に緊急事態宣言が出て、卒業式や卒業旅行なども経験できなかったことは気の毒とは思う。しかし、さらに来年(2021年)の新入社員達は、何よりあんなに楽しい学生生活そのものも1年以上にわたって奪われてしまった上、大きな不安を抱えるまま社会に出てくるのだ。あまりにも可哀想ではないか。彼ら・彼女らに元気と勇気と希望を与えることは、企業のみならず、社会をあげての使命と言っても過言ではないのではないか。

コロナ禍の新入社員教育のあり方

これまで私達PFCでは、リーダ―向け、マネジメント向けのサービスの提供が中心で、新入社員教育は積極的には提供してこなかった。組織開発のご支援を生業とする私達にとっては、やはり、組織を変えていくには、リーダーやマネジメントへのアプローチがよりインパクトをもたらすと考え、フォーカスを当ててきたのだ。ただ、正直に言うと、新入社員向けの教育市場は、リーダー向け・マネジメント向けと比して、相当多くの競合研修会社がひしめく“レッドオーシャン”であり、安易にターゲットとすることを避けてきたこともまた事実だ。
しかし、上述したように、コロナ禍における新入社員教育は社会をあげての使命、即ち皆で知恵を絞って立ち向かうべき“社会課題“と捉え、私達も真正面からチャレンジしなければならないと考えた。

新入社員教育の効果的な提供を考えるにあたっては、あらためて、新入社員教育の意義から考え直しておく必要がある。
当然のことながら、新入社員研修には、「新人の早期戦力化」という目的があり、さらに、「社会人としての意識づけ」「新入社員の結束の強化」「早期離職の防止」「組織への帰属意識の醸成」などさまざまな狙いがあるはずだ。

新型コロナウイルス感染症の収束が不確定な中、その狙い(WHY)はそのままに、企業はWithコロナ時代を前提とした研修プログラムの提供を見直す必要がある。提供方法(HOW)はもちろんオンラインでいかに効果的な提供ができるかを追求することだ。そして、重要なのは提供内容(WHAT)であり、Withコロナ時代の新入社員教育で、今、特に強化して提供すべき内容は次の3つと私達は考えている。

コロナ禍の新入社員教育に求められる3つのキーワード

新型コロナウイルスの影響を踏まえ、新入社員教育で今、特に強化して提供すべき内容は3つと上述したが、補足しておこう。

<①セルフ・リーダーシップ:「自発・自立・自律」の促進>

リモートワーク下では、周囲の先輩がすぐ傍について、仕事を進めるということができない。先輩は始終様子を見ているわけではなくとも、物理的にすぐ傍にいるということで得られる情報量は圧倒的だ。新入社員の方も、何かあればすぐに聞けるというのは、様々なことを学び吸収するのに必要な環境だったはずだが、それが叶わない状態が続く。

従って、新入社員には自発・自立・自律、即ち「セルフ・リーダーシップ」の発揮がこれまで以上に求められる。セルフ・リーダーシップが発揮できる社員とそうでない社員との差は、リモートワーク下では極めて大きくなることが想定される。これまでも、新入社員にだって“リーダーシップ”が求められると私達は考え、セルフ・リーダーシップのプログラムの提供を行ってきたが、Withコロナ時代は、ますますその重要性が高まるはずだ。

<②コミュニティ:横(新入社員間)および縦(新入社員とメンター間)の「ネットワーク」づくり>

新入社員のコミュニティ形成と、あるいは、先輩メンターも含めたコミュニティ形成が喫緊の課題だという企業は少なくないようだ。

これまでは、新入社員研修を行っていれば、自然に“同期”が形成されていたはずだ。しかし、オンラインでの研修では、自然には“同期”感は生じないようだ。研修および研修中に、コミュニティが形成されるよう様々な「ネットワークづくり」の仕掛けが必要である。 先輩メンターも、リモートワーク下でどのように新入社員と接していけばよいか不安な人が多いようだ。普段から、コーチングやメンタリングのトレーニングを提供しているならば、それをオンラインにすればよいと思うが、さらにそれに加え、先輩メンターのオンラインコミュニティ、および効果的に新入社員のオンラインコミュニティに効果的に関われるような仕組みも考えておくことが求められている。

<③エンゲージメント:組織と自分との「つながり」の確信>

リモートワーク下では、「“機能体”は機能していても、“共同体”はなかなか機能しない」ということをこのシリーズでは再三再四に渡って述べてきた。

新入社員教育においても、組織への帰属意識の醸成は、中長期的にみて企業としては最重要テーマだろう。ただ、「組織への帰属意識」という言い方は、Withコロナ時代においては適切な言い方ではないのではないかと思う。そもそも物理的にその場にいて、組織を感じることが難しいのだ。組織に帰属している感というより、一人ひとりが自立・自律して働く中で、自分が働いている組織・事業・業務と、自分との「つながり」を強く確信できる感がより重要になるのではないか。

それは即ち、ミッション(企業理念)・ビジョン(将来像)バリューズ(価値観)の浸透ということだ。浸透は、それらを押し付けるのではなく、あくまで、それらと自分がつながっていると確信できるよう、誘うことがカギとなる。


これらの課題に対して、PFCのブランチャード事業部では、11月にC&M (コラボ+モデレート、英文表記はcollaborative & moderated)という新しい研修方式によるセルフ・リーダーシップのプログラムをスタートします。受講者の学びとネットワーキングを効果的に促進し、自組織に対するエンゲージメントを高めることができるプログラムです。くわしくは、ブランチャード事業部の記事をご覧ください。
来年度の新人研修にお薦め! C&M方式で身に付けるセルフ・リーダーシップ