人と組織のニューノーマル(新常態) ~Withウイルス時代の組織開発・人材開発の論点2「チームワーク」のニューノーマル

チームが“ワーク”(機能)するための基本要素はこれまでと変わらない

 かつて、働き方改革を目的としたリモートワークの導入については、多くの企業が様々な理由を付けて、「リモートワークの導入は難しい」と言ってきた。理由として挙げられてきたのは、「顔を合わせることの重要性」から始まり、「情報漏洩のリスク」「労務管理の難しさ」といったことだった。
 
 しかし、感染症対応が求められる中で、そういった「導入が難しい理由」をとりあえずすべて脇に置いて、多くの企業が「導入が難しい理由」を解決しないまま、リモートワークに踏み切った。踏み切らざるを得なかったと言える。

 ただ、「導入が難しい理由」のうち、「リモートだから」を理由にしていたものは、実は導入さえしてしまえば一気に解決に向かったことが多いのではないかと思う。むしろ、問題となったのは、リモートワークであるかどうかに関係なく、これまでも課題であったことではないか。リモートワーク導入によって、それらの課題がクローズアップされただけではないだろうか。

 実際、リモートワークに移行して職場の生産性が上がらないのは、“リモート”が理由ではなく、 “(チーム)ワーク”が理由であることが少なくないようだ。ならば、チームワークに焦点を当て、チームワークを向上させることに注力しなければならない。

リモートでのチーム運営に成功した人々

 コロナ禍でリモートワーク環境が強いられる中でのチームワーキングは、『離れている』こと、そして、様々なことが『目に見えない』ことを前提として、効果的に運営をしていかなければならない。

 多くのチーム運営者にとってこのようなことははじめての経験で、試行錯誤が強いられたはずだが、この間問題なくうまく運営ができたという人達に、リモートワーク下のチーム運営で重要だったこと、効果的だったことを聞いてみると以下のような事が挙がった。

・チームとして何を目指すのか(目標)、何に重きを置くのか(方針)をあらためて明らかにし、そして目標や方針の意義を十分にチームの皆に理解してもらうことが重要だった。

・チームとしての仕事の進め方、すなわち業務の手順や役割分担、あるいはルールや約束ごとをあらためて整え、共有した。また、基本的なPDCAサイクルを決めることに加え、問題が起きた場合に活用すべき課題解決の方法などまで決めておくと効果的だった。

チームが効果的に機能するためには、リーダーが各人の状況や適性を把握した上で、ひとりひとりの効果的な育成をサポートすることが欠かせなかった。リーダーとメンバーの間の信頼関係が土台として必要だった。

これらは、我々が長く提唱してきたチーム作りの3要素『ベクトル・プロセス・ヒューマン』の重要性をなぞったことに他ならない。

チームとして何を目指すのか(目標)、何に重きを置くのか(方針)をあらためて明らかにし、そして目標や方針の意義を十分にチームの皆に理解してもらうことが重要だった。→「ベクトル」を合わせる

チームとしての仕事の進め方、すなわち業務の手順や役割分担、あるいはルールや約束ごとをあらためて整え、共有した。また、基本的なPDCAサイクルを決めることに加え、問題が起きた場合に活用すべき課題解決の方法などまで決めておくと効果的だった。→「プロセス」を共有する

チームが効果的に機能するためには、リーダーが各人の状況や適性を把握した上で、ひとりひとりの効果的な育成をサポートすることが欠かせなかった。リーダーとメンバーの間の信頼関係が土台として必要だった。→「ヒューマン」に留意する

 つまり、チームを「ワーク」させるための基本要素は、リモートワークという環境におかれても何ら変わらない、ということが確認できたということになる。

 さらに、上記の『ベクトル・プロセス・ヒューマン』を具体的に機能させるために、どの人も、定例ミーティングと1on1ミーティングを組み合わせながら推進していたことも付け加えておきたい。

チームづくりのニューノーマル(新常態)=ハイパフォーマンス・チーム

 一方、この間は問題なくチーム運営ができたという人達からも、リモートワークを前提とするチーム運営に対しては、これからの不安も語られた。そして、共有された不安がある程度共通していることは我々にとっても興味深いものだった。

・目標に向かって各人の仕事を邁進できてはいても、以前のようにチームで同じ空間や時間を共有できていないので、チームに対する「帰属意識」が希薄になりつつある。

・効率的には運営できても、「創造的」に運営することが難しい。例えば会議では、リモートで必要な情報の共有や進捗の確認などは十分にできるし、むしろ無駄がそぎ落とされて効率は高まったとさえ思えるが、何か新たなものが生み出されることが少なくなったように感じる。

・チームリーダーとメンバー各人との時間は、リモートになっても変わらず保つようにしているものの、メンバー間の「関係性」は課題。チーム内でのナレッジの共有やメンバー間の相互支援などが起き難くなってきている。

 これらは実は、『チーム』作りに留まらず、『ハイパフォーマンス・チーム』作りの必要性を示唆していると考えるとわかりやすい。ハイパフォーマンス・チームというのは『組織開発ハンドブック』(2006年・東洋経済新報社)で我々が提唱した概念だ。
 簡単に振り返ってみよう。


チームが効果的であるための要素

◆組織にはグループ⇒チーム⇒ハイパフォーマンス・チームの発展段階がある。
⇒グループ:単に人が集まっただけの状態で、各自が自分の役割のみをこなす段階
⇒チーム:各自が自分の役割をこなしつつ、他者との協業を通じて相乗効果が生まれる段階
⇒ハイパフォーマンス・チーム:ビジョン(将来像)やバリューズ(価値観)が共有されることで一体感が醸成され、メンバー各人は時に自分の役割を超えながら協調し、相互に成長しながら新たなものを創り出し、高い成果を生み出す状態

◆チームをワーク(機能)させるためには、『ベクトル・プロセス・ヒューマン』の3つの要素が必要となる。従って、単に人が集まっただけの「グループ」という状態から、「チーム」という状態に進めるためには、明確な方針と目標の設定と共有(ベクトル)、手順や役割分担の明確化(プロセス)、そしてメンバー各人の能力を把握し適性を活かすこと(ヒューマン)の3つが欠かせない。

◆さらに、「チーム」という状態に留まらず、「ハイパフォーマンス・チーム」の状態に進められるとよい。ハイパフォーマンス・チームづくりのために必要なのは、やはり『ベクトル・プロセス・ヒューマン』の3つの要素であることは変わらないが、3つの要素に求められる次元は大きく異なるのだ(次項で詳述)。


 この概念を提唱してから15年が経過する。これまで多くのクライアントに対し、私達は、チームづくりのお手伝いをしてきた。しかし、その多くは、文字通り「チーム」づくり、即ち、単なるグループという状態から脱してチームという状態になるよう、目指す過程の支援やそのためのきっかけづくりを提供するものだった。「ハイパフォーマンス・チーム」づくりを目指す必要性を認識していたチームリーダーはそう多くはなかった。

 しかし、今こそ、単なる「チーム」で終わらせず、「ハイパフォーマンス・チーム」を目指すべきだ。

 目に見えにくい状況を前提としたチームづくり、これからの不安を払拭するチームづくりが求められるとするなら、チームづくりのニューノーマル(新常態)とはハイパフォーマンス・チーム作りと言っても過言ではないように思うのだ。

ハイパフォーマンス・チームづくりの進め方

 次に、ハイパフォーマンス・チームの段階に進めるために押さえるべきポイントについて、単なるチームづくりとはどのような点が異なるかを細かく見ていこう。

「ベクトル」を合わせる:ビジョンやバリューズが深く共有され、各人の判断基準になる
 チームづくりにおいては、目標や方針を明確にし、共有することがポイントだと述べた。ハイパフォーマンス・チームづくりにおいては、ビジョン(将来像)やバリューズ(価値観)を明確にし、共有することがポイントだ。

 今後メンバー各人がオフィス以外の場所で仕事をする機会が増えてくることに伴い、各人が自身で判断を下しながら進めることが求められる場面が増える。高い目標やKPI、あるいは業務の方針だけが共有されていても、自らの中に判断の軸となるものが明確になるわけではない。ビジョンやバリューズが腹に落ちており、各人がチームの向かう方向性や存在意義を理解していて、様々な判断を自信を持って下せる。自分ごととして捉えられることができて、チームへの貢献意識を持てる。

「プロセス」を共有する創造的な交流を起こす
 チームづくりにおいては、業務の手順や役割分担、あるいはルールや約束ごとを整理することがポイントだと述べた。ハイパフォーマンス・チームづくりにおいては、こうした“効率”よく仕事を進めるためにせっかく整えたプロセスを超えて、時には効率が失われることがあってもあえて“創造”的な交流を起こすことがポイントだ。

 現在でも、高い目標を達成するために多くのやるべきことに追われ、周囲の人たちが何をしているかがわからないということが日常的に起こっているが、リモートワークが進むとさらに他者の状況はわからなくなる。創造的な交流を起こすための第一歩は、『お互いが何をしていて、どのような状況か』を見える化することだ。見える化することで、各人が他のメンバーと積極的に関わっていこうという機運も醸成される。

 そして、さらに重要なのは、チームの外のメンバーとの交流を積極的に仕掛けることだ。これからは、偶然会った人とひょんなことから盛り上がって、新しいアイデアが浮かぶといったことが、極端に少なくなることは想像に難くない。創造的な交流をいかに起こせるかは、チームのニューノーマルの生命線だ。

「ヒューマン」に留意する:メンバー間の相互支援と相互学習を進める
 チームづくりにおいては、チームリーダーとメンバー各人とが信頼関係を築き、ひいては、それに基づき各人の適性を把握した上での、ひとりひとりの効果的な育成がポイントだと述べた。ハイパフォーマンス・チームづくりにおいては、チームリーダーとメンバー間ではなく、メンバー同士の関係性を向上させることがポイントだ。

 メンバー間が相互に支援し合うこと、共に学び合い成長を支援し合うことを実現するためには、メンバー間に、今まで以上の信頼関係が構築されることが必要となる。それをリモート中心で働く環境で希薄化しがちな状況でどのように推進していくのか、について答えを見つけていく必要性がある。

ハイパフォーマンスチームを作るためのチェックリスト

 上記で述べてきたことをチェックリストとして整理した。ぜひチームリーダーご自身でそしてチームメンバーと議論や対話を行なってみてほしい。

□メンバーが自律的に仕事をするために、どのように方向づけを行うか
□メンバーが自チームで働く意義をどのように見出すか
□メンバー同士が互いに『何をしていて、どんなことに困っているのか?』について認識し合うためにはどうしたらよいか
□メンバー同士が交流し合う場をどのように作っていくか
□メンバーが絶え間ない変化に適応/進化できるようにするために、どのように勇気づけるか
□メンバー同士が変化に向けてどのようにサポートし、学び合うような気運を醸成するか


PFCは、リモートワーク環境下における組織開発についても研究を重ね、コンサルティングやオンラインワークショップの開催なども行っています。Eブック「リモートワーク時代の組織開発ハンドブック」も無料配布しています。ぜひご覧ください。
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