宇宙飛行士のストレス・マネジメントとチェンジ・マネジメント

宇宙飛行士のストレス・マネジメント

リモートワークする人が増え、宇宙飛行士のセルフ・マネジメントやチーム・マネジメントが注目を集めているようだ。

地球と火星は往復556日かかるという。宇宙飛行士は長期間に渡って狭い閉鎖空間で生活し、もちろん飲みにも遊びにも行けない状態が1年半も続く。昼も夜も全く同じ数人のメンバーで過ごす。ストレスは間違いなく溜まるだろう。にもかかわらず、ロケットの中でうつ病になった宇宙飛行士など、確かに聞いたことがない。

そこで、10年前にベストセラーになった『ドキュメント 宇宙飛行士選抜試験 (光文社新書)』(大鐘良一・小原健右 著)を読み返してみた。本書によれば、宇宙飛行士の試験で問われるのは、次のような資質だという

・“極限のストレス”に耐える力
・リーダーシップとフォロワーシップ
・場を和ませ、チームを盛り上げるユーモア
・危機を乗り越える力
・試される覚悟

まさに、感染症対策の渦中にいる今現在、次元は異なるかもしれないが、我々に求められている資質だと感じる。

宇宙飛行士のチーム・マネジメント

宇宙空間でのミッションは、宇宙飛行士だけでなく、地球上から支援する多くの人も含めたチームで達成を目指すものだ。そのチームは、当然のことながら、終始完全なリモート環境で活動する。どのようにマネジメントされているのだろうか。

宇宙飛行士訓練のひとつに「スペースフライト・リソース・マネジメント(SFRM)」と呼ばれるものがあると聞く。ミッションを達成するためにどうチームに働きかけ、チームとして意思決定し、チーム全体を機能させるかを学ぶものだ。最も重視されるのは、「宇宙という予測が出来ない環境を想定し、万が一リーダーに不測の事態が生じてもチームが機能すること」だという。 『宇宙飛行士だけが知っている 最強のチームのつくり方[(大和書房)』(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機[JAXA]・山口 孝夫著)によれば、極限の環境下でチームプレイを要求される宇宙飛行士に必要とされる行動様式は、次の9項目とされているようだ。

①状況認識
②コミュニケーション
③異文化理解 
④チームワーク
⑤意思決定
⑥チームケア
⑦リーダーシップとフォロワーシップ
⑧コンフリクトマネジメント
⑨問題解決

状況に応じて変化する自分の役割を見極め、チームのことを考えて行動する力を養うトレーニングが重要視されているということだ。実際のトレーニングの中には、例えば、チームの中でリーダーとフォロワーが毎日交代しながら夏山・冬山登山に挑むというプログラムなどがあるという。誰もがリーダー役としてもフォロワー役としてもチームに必要な機能を果たせるようになるチームが、宇宙環境では最も強いチームというわけだ。

宇宙飛行士に向くのは浦島太郎か桃太郎か

ところで、つい先日とても面白い話を伺った。筑波大学医学医療系産業精神医学・宇宙医学グループ教授の松崎一葉さんの話だ。『クラッシャー上司(PHP新書)』という本の著者として有名な方だが、JAXA客員研究員として、宇宙飛行士の資質と長期閉鎖空間でのサポートについての研究を長く続けておられる。

宇宙飛行士の最終候補生を3人に絞るための面接で聞く最後の質問の一つに、「浦島太郎と桃太郎のどちらが好きか」というものがあるのだという。そして、選ばれるのは、浦島太郎を選んだ人だというのだ。

桃太郎は、戦いの前に緻密な分析をし、サルとキジとイヌを従えて鬼退治に行く。言わば桃太郎の物語は論理の塊なのだ。しかし、最終選考まで残る人に論理性があることは既に十分に証明されている。

対照的に、浦島太郎は不合理で理不尽な物語だ。いじめられているカメを助け、酸素ボンベなしに海に潜り、竜宮城で遊んで帰って来たらおじいさんになってしまう。

不合理を許せるかどうか、理不尽さに耐えられるかどうかが問われている。これができる人は、情緒的余裕があるということだと松崎さんは語っていた。宇宙は想定外だらけの空間だ。想定外なことが起きても強くあるためには、論理性と情緒性をバランスよく兼ね備えていることが重要なのだという。

宇宙飛行士のセルフ・マネジメントやチーム・マネジメントにはたくさんのヒントがありそうだ。

松村卓朗(PFC代表取締役)


ピープルフォーカス・コンサルティング(PFC)では以前から、リモートワークによって必要となる、バーチャル・コミュニケーション、バーチャル・チームの運営、あるいはバーチャル・ワークにおけるリーダーシップのあり方などについて研究を重ね、そのための研修プログラムを国内外の大手企業を中心に提供してきました。

そんな私達が緊急リリースしたのが「リモートワーク時代の組織開発ハンドブック」です。本ハンドブックでは、我々の知見の一部を、以下の章立てでご紹介しています。

・リモートワーク時代の“ワーク”
・リモートワークの可能性
・リモートワーク時代のチーム運営
・リモートワーク時代のリーダーシップ
・リモートワーク時代のファシリテーション
・リモートワーク時代の人材育成
・リモートワーク時代のセルフ・マネジメント

ハンドブックはこちらからダウンロードしていただけます。
ぜひご一読下さい。
皆様のリモートワークの一助となれば幸いです。