ATD2019のエリック・ウィテカー基調講演のご紹介<ATD2019レポート(3)>(チェルシー・リン)

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ATD2019の基調講演3名のうちオプラ・ウィフリー氏とセス・ゴードン氏の基調講演レポートは「ジャンゴのちょっといい話」(田岡純一)でご紹介しましたが、残るEric Whitacre エリック・ウィテカー氏の基調講演を、ラーニングチームのメンバーのひとりPFCシニア・コーディネーターのチェルシー・リンがレポートします。

Eric Whitacre エリック・ウィテカー

過去にグラミー賞を獲得した経験を持つ作曲家であり、指揮者であり、画期的なバーチャル合唱「Deep Field」の創始者。テクノロジーを駆使したイノベーティブな音楽アレンジの担い手としてもよく知られており、バーチャル合唱団は世界中多くの人に知られている。

Key message 1

<自分よりも大きな存在に包まれるその感動と、協働することの可能性>  

エリックが初めて合唱団の中に立った時、歌いだす皆に囲まれた時に感じた、人生に衝撃を与えたあの感動 ― エリック本人はこの感動を「I was in something larger than myself」(自分がより大きな何かに包まれているような感覚)と説明した。この感動こそが、彼が音楽を志し今もなお世界的に有名な音楽家として活動し続ける唯一の理由だ。子供のころから宇宙が大好きなエリックは、初めて宇宙に浮かぶ無数の銀河系の写真を見たとき、この感動をどうにか表現したいと思ったという。自分ひとりでは絶対に生み出せないけれど、誰かと協同し、Harmony(調和)を作りだすことで、生み出すことのできる「想像を超える大きな感動」がある、と語る音楽家の彼の言葉には、昨今の協同(Collaboration)の重要性が問われだしている人材開発の業界にも通じるものがあると感じた。

Key message 2

<チームの中には沢山の”不完全”があるこそ、”最高”を演出する-”Unify”>  

彼が初めてVirtual Choirsを創った時から、今もなお大切にしている1つのポリシー、それが「誰でも参加できること」だ。オーディションは一切無し、世界中でネットに繋げる環境があるならば、年齢や国籍、音楽の実績等も関係なく、誰でも参加することができる。選りすぐりの美声を集めるのではなく、望んだ全ての人の声を集めると、不思議と音楽そのものが持つ「角」が取れて、「丸い」最高のハーモニーが創られると言う。音痴でも歌が下手でも、その小さな1人ひとりの声がかけがえのないピースとなり、想像を越える一つの感動を作り出す。全てをUnify(ひとつにする)ことで、不完全が完全を可能にする。基調講演の一人目のスピーカーであるOprahが言っていた、「Find wholeness – Unify yourself」という最後の意味深いメッセージと共通点が伺えた。

Key message 3

<When Technology meets Art:テクノロジーが示す無限な可能性>  

どんな些細な音符にも記号にも、全て意味があり、壮大なある一つの感動を形作るのにかけがえのない存在になっている「Emotional Journey Map」をまず描いてから譜面を書きだす、彼らしい作曲の方法を紹介する際にこんなことを言っていた。自分の中にある壮大な思いを描いたこのMapを、表現してくれるのは音楽(Art)であるが、そのArtを、想像を超える感動へと無限に展開してくれるのはTechnologyだという。「Art tells us who we are, while Technology tells us how we can be; together, they tell us how we want to be.」という最後のメッセージは、まさに世界中に感動を与え、ハーモニーを生み出したVirtual Chiorsを生み出した彼から聞くと、とても納得がいく。心理的・身体的障害から、もう誰かと1つになることを諦めていた世界中の老若男女の「歌い手」から、毎日感謝の頼りが届くという事実と、回を経るごとに1万人単位で参加者が増えていくこのバーチャルコーラス集団を見ていると、ArtとTechnologyは相反するのではなく、掛け算して行ける可能性があり、人材や組織開発等のソフト領域において、近年テクノロジーが話題になっていることにもうなずける。

Impression

音楽という、世界共通の言語を使ったグローバル・インクルージョンの最高の事例であるエリックの話は、いかに最高の1チームを作るか、いかにHarmony(調和)をもたらす最高のチームを作るか、という視点において組織作りにヒントを与えてくれる話であった。ここにきて、一人目のスピーカーOprahの「Gift」「Wholeness」や、Sethの「Collaboration」・「Generosity」等のキーワードが、エリックの「Harmony」「Unify」に繋がったように感じた。一人ひとりそれぞれ違う、「声」を持った世界で、どれかを排除したり、その個性をジャッジしたり、殺したりしてしまうのではなく、その全てを受け入れることで生まれる新しく、素晴らしい価値を創造して行く ― 様々な境界線が日に日になくなっていき、劇的に変化してゆく今の世界で求められるのは、こんな風に全体をUnity – ”1チーム”にして行けるリーダーなのかもしれない。

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