アフリカに初めて挑む日本人現役Jリーガーの挑戦

【サッカーから学ぶ組織開発・人材開発:松村卓朗】第81回:アフリカに初めて挑む日本人現役Jリーガーの挑戦~元横浜F.マリノスの中町公佑選手が、数十分の一の給与でザンビアのプロリーグに移籍し、同時にNPO法人を立ち上げた~

Jリーグの横浜F・マリノスを退団し、アフリカのクラブへの移籍を目指していた中町公佑選手の移籍先が、先月、ザンビアの1部のゼスコユナイテッドFCに決まったというニュースを耳にした。

早速自身のSNSで、同クラブのエンブレムとともに

「ザンビアプレミアリーグ『ZESCOUnitedF.C』と2019シーズンより新たに契約を締結しました。移籍に際してゼスコの関係者のみならず沢山の方のご尽力がありながら無事契約の運びとなりました」

と報告していた。

中町選手と言えば、Jリーグの有力クラブの主力選手だ。昨年は、チームの選手会長も務めていた。このシーズンオフには、これまで所属していた横浜F・マリノスからは向こう2年の契約のオファーも得ていたと聞く。

先月放送されたテレビの番組(テレビ東京・「SPORTS ウオッチャー」)では、中町選手への密着取材が特集されていた。給与は、これまで得ていた額の数十分の一になると言う。プロとはいえ、練習場所にはロッカールームもなく、着替えるのはグランドから一段上がっただけの踊り場だ。フィジカルチェックで病院で注射を受けるのに勇気が必要なほどの現地の衛生状況も、生々しくレポートされていた。クラブ首脳からおいしいと紹介されたレストランに行ってはみたが、一口食べただけで、「自炊することを決めた」と言っていた。幼い子供二人と奥さんを日本に残しての挑戦が始まった。

しかし、何といっても、彼の決意の強さを物語るのは、どのクラブとの契約も何もまだ決まっていないうちに、いち早く今年の年始めには横浜F・マリノスからの退団を発表し、そして、ザンビアに渡ってしまったという事実だ。番組では、「直接ザンビアに来ていなければ、どことも契約できなかったかもしれない」と語っていたので、この行動力や熱意から本気が伝わったことも、クラブの意思決定を促したようだ。

実は、昨年、ご本人とお会いして、直接お話する機会を得て、アフリカへの想いを伺ったことがあった。

大学時代の同級生のNPO法人Dooooooooの活動を通じ、アフリカにサッカーボールを送る活動を2013年から続けてきた、と語っていた。「自分が移籍することで日本とアフリカをつなぎたい。自分がサッカー選手であることの意味を最大限考えた中で下した決断だ。」と、並々ならぬ使命感を共有していただいた。

中町選手の言葉を聞いて、かつて中村俊輔選手が語っていたことを思い出した、そして、大いに感銘を受けた、という話を中町選手にさせていただいた。

中村俊輔選手は、現役のサッカー選手であるうちは、サッカーだけに力を注ごうと考えていたという。しかし、現役時代にしかできないこと、旬のうち、即ち、まだ世の中に大きな影響力を持ち、多くの人が自分の言動に耳を傾けてくれるうちにしかできない社会貢献があるのではないか、と考えるようになったという。

中町選手は、多くのアフリカの子供たちは成功体験がなさすぎる、ということを語っていた。学校で勉強したらどのような将来が待っているかということがイメージできないから、親が子供に水汲みをさせてしまう。

また、ボールを送り続けている中でも、子供たちが笑顔になっていくのは嬉しいけれども、アフリカ人はもらうことに慣れてしまっていることに危機感を感じたということも話していた。やはり自分たちで立ち上がらないと、世界から搾取されるだけだと。

ただもらって支援してもらってありがとう、だけではなく、本当に自分たちで自立するということが、ここから先アフリカが人口も増えて発展していく上で、とても重要だと思っている。こうしたことを自分が本当に寄り添ってやっていくために、アフリカに移籍したいと言っていた。

中町選手は、この度、移籍と同時に、NPO法人Pass onを立ち上げたことを発表していた。以下、このNPO法人に関する中町公佑選手の公式ホームページでのメッセージを紹介しておきたい。

チームを出て行った人間にこれまでも沢山の温かいお言葉をありがとうございます。

本当に愛情深いサポーターだなとコメントを読んで感じています。

多方面から激励のお言葉を頂き、中には他チームのサポーターの方までエールをもらい、同じ日本人、プロサッカー選手として有難い気持ちと同時に心強く思います。

今回アフリカ移籍を決断し皆さんにお伝えしましたが、もう一つ発表があります。

『NPO法人Pass on』

を私が代表理事となって設立しました。

2013年より銅冶氏によるNPO法Dooooooooと共にアフリカにボールを送ってきましたが、自らの手でPass on projectの継続と拡大。そしてアフリカの医療環境の改善の支援を目的にNPO法人Pass onの設立となります。

アフリカへの想いは兼ねてからお伝えしてきました。

日本には様々な活動をしている方が沢山います。震災や被害を受けた方々に支援をしている団体や個人でのボランティア活動等、日本人の持っている助け合いの精神が形になっています。

ここからは私の持論ですが、ボランティアのきっかけや入り口は人それぞれでいいと思っています。

その時々に感じたことや、何か出来ないかという衝動。私の様に友人の一声がきっかけというのもあるでしょう。

どんなことがきっかけであれ、人の為に何か行動を起こす。そういった人が増えて行くことが私の願いでもあります。

5年間サッカーボールを送ってきて、次なるステップは自分の想いと皆さんの想いの詰まったボールを直接渡しに行くことです。

実際にボールを各地に持っていき子供達の笑顔を作り、なかなか見えない明るい未来への手助けとアフリカ人の自立をサポートしていきたいと思っています!

また、医療関係の改善に向けても取り組むべき課題の一つとして認識しています。

アフリカ各地では、まだまだ医療環境の不整備からくる出産時に命が失われてる事実や病気の蔓延等問題が数多くあります。

 

私自身、長男を生後43時間で無くした経験があります。日本の医療機関の繋がりを大事にしながら日本とアフリカでの医療環境の助けになれたら、1人でも多くの救える命を救う手助けにと。強く願っています。

『Pass on』

日本とアフリカを繋げる第1歩です。

ホームページも作成したのでぜひご覧ください。https://pass-on8.net

私達も、10年間スリランカで続けてきた「GIAリーダー・プログラム」の次の候補地として、「ザンビアGIAリーダー」プログラムを近いうちに実現したいと考えている。

私も個人的に、そのプログラムの中には、是非とも中町選手の試合観戦を盛り込み、アフリカに初めて挑む日本人現役Jリーガーの挑戦を心から応援したいと思っている。