中国での異文化体験を通じた学び@TELL in 上海(PFC China 安田太郎)

みなさんはTELLをご存知でしょうか?中国版TEDといわれるイベントで、Think, Enjoy, Link, Liveの頭文字をとって名づけられています。
中国の社会で生きる上で欠かせない「変化と選択」の大切さを伝えることを目的にしたこのイベントに、初の外国人としてPFC Chinaの総経理 安田太郎が登壇し、中国語でプレゼンテーションを行いました。
テーマは、中国での異文化体験を通じた学び。
ぜひご覧ください!

以下は書き起こしになります。

みなさん、こんにちは!(こんにちは!)
こんにちは!安田太郎と申します。70年生まれの日本人です。

まず、この写真をご覧ください。みなさんすでにご覧になっている写真ですね。これは、今回のTELL活動のチラシに使われた写真です。私はこの写真を見てすぐに日中文化の違いを感じました。さあ、みなさん何だと思いますか?

(背景が黒色)・・・残念ながら違います。私の表情を見てください。

(笑ってない)・・・そう!笑ってない。そうなんです。私以外、みんな笑っているのに。私だけ笑ってないのです。

日本の学校で、このような写真を撮るとき、先生がよく言うのは「笑わない!」ということ。すこし変わってますよね。でも日本の教育ではこう教えられます。こういった写真を撮るときは特にそうなんです。

さて、今日は私の異文化体験についてお話したいと思います。

私は日本の神戸で生まれ、3歳の時に両親と一緒にタイに行き生活を始めました。タイで育ちました。皆さんもご存知の通り、タイは常夏の国。一年中、友達と一緒に泳いで遊んでいました。当時は真っ黒に日焼けしていました。またその当時、私にとっては、日本は夢のような場所、ディズニーランドのような場所でした。なぜなら、日本を雑誌やテレビでしか見たことがなかったからです。

私が12歳の時、タイから日本に帰ってきました。そしてすぐにタイと日本の文化の違いに直面したのです。

例えば、給食です。日本ではみな同じ時間に同じものを食べます。これにまず驚かされました。なぜなら、タイでは両親が弁当を作り、学校に持っていっていたのですが、弁当にはいつも大好きなものが入っています。でも給食の場合、あるときは好きなもの、またある時は嫌いなもの。でも全部食べなくてはいけないのです。毎日毎日ストレスでいっぱいでした。

また小学生が持つかばんですが、この写真を見てください。小学生が持っているランドセル、男の子は黒、女の子は赤。一方私の持っていたかばんは。青のスヌーピーが描かれたスポーツバック(かばんを持つジェスチャー)。さらに、当時、私の髪の毛は長く、色は黒く焼けて、変なかばんを持っている男の子。日本の小学生からしたら変わった生き物に見えたでしょう。宇宙人のようだったかもしれません。

結果どうなったか?私はいじめにあいました。悪口を言われ、殴られました。やり返したかったのですが、まったくだめでした。なぜなら、僕をいじめていた子は一人や二人ではなく、20人もいたのですから。そりゃ無理にきまってます、忍者じゃないんですから。

孤独感を感じましたし、自由もなく、自分の個性を出すこともできずにいました。そしてどんどん元気がなくなっていきました。

ある日、そんな元気のない様子を見た母が、私を病院に連れて行くと思いきや、お寺に連れて行くのです。そこでお坊さんの説法を聞くのです。テーマは、健康だったり、人間関係だったり、家族問題だったり。子供にとっては興味が持てるものではありませんでしたし、そもそも内容が難しいので理解できません。まったく面白くありません。それでも母は私をお寺に連れて行き続けたのでした。

でもそんなある日。私の中にある変化が起こりました。それは、どんなに過酷な状況であっても、常に人の心の中には、まったく外界からの影響を受けない、とても静かな場所がある、ということ。そして、この静かな場所の存在を知ってからというもの、私は自分の感情を自分でコントロールすることができるようになりました。

どんなにいじめられても全く反応しないようにしたのです。ある日の学校の給食の時間、私のところにいじめっ子がやってきて、突然自分の頭を手で掻き出し(頭を掻くジェスチャー)、ふけを私の給食の上に大量に落としたのです。

なんてひどいことをするんでしょう!

でも私は全く動じません。まったく反応を示しません。どんなことをされても全く反応しないため、いじめっ子たちもいじめが面白くなくなったのでしょう。だんだんいじめられることも減っていき、いじめがなくなりました。

当時のことを振り返ると、なぜ自分がいじめられているのか、まったくわかりませんでしたし、もちろん「異文化」の存在も知る由もありません。でもそんな中で、私の行動は変わり、習慣が変わり、そしていじめの状況も変わっていきました。

これが私の人生最初の異文化体験でした。

1995年、私は初めて活力に満ち溢れた上海にやってきます。でもこの上海での異文化体験が私のその後の人生を大きく変えるとは夢にも思っていませんでした。

当時ヤオハンという会社に勤めていました。ところが97年に会社が倒産します。私は、自分の実力をもっとつけていかねばと考え、上海の復旦大学に留学することにしました。でも当時、貯金がほとんどなく、毎日15元で生活していました。3元のウーロン茶さえ買えないのです。ですので、大学の寮で提供される無料のお湯だけを飲んでいました。学校の近くにある5元で腹いっぱい食べさせてくれる食堂が私の命をつないでくれたのでした。

当時は、お金がないだけではなく、日中の文化・習慣の違いに驚く毎日でした。

ある日、大きなスーツケースをもって、バスに乗った時のことです。バスの中は人でいっぱい。つかむところさえないような状態でした。私の前に立っていた10歳くらいの女の子とその子のお母さん。突然私のスーツケースの取っ手をつかんできたのです。びっくりしました。どうして私のスーツケースをつかむの?!日本ではこのような経験をしたことがなかったため、本当にびっくりしました。

また買い物をするために列に並んでいると、よく横入りされました。やめてほしいのですが、なんといえばいいのか、、言いたいことが言えないのです。心の中はいつも複雑でイライラ。

そこで、大学の教授のところに行き、質問してみたのです。どうしてこんなに習慣が違うのか?と。

すると教授は、こう言いました。それは日本人と中国人の距離感の違いだね。と。

私はこの「距離感」という言葉をきき、突然、霧が晴れたようになりました。日本では、人と人の心地よい距離は1メートルちょっとと言われます。これは、私たちがお辞儀をする文化だからです(お辞儀のジェスチャー)。距離があまりにも近いと、ぶつかってしまいますからね。

私は、日本のこの「距離感」で、1メートルくらい空けて列に並んでいたのです。中国では私が列に並んでいるように見えなかったのでしょう。だから当たり前のように、横入りされていたのです。それが分かった私は、列に並ぶときは、でっきるだけ、前の人に近づき(前に近づくジェスチャー)、前の人との間に空間を極力開けないように行動を変えました。結果、横入りされることもなくなっていきました。

いうまでもなく、文化・習慣の違いは、ものの見方の違いであって、いい悪いの話ではありません。

現在、上海でピープルフォーカス・コンサルティングという会社にいます。

ここでは、日本企業と中国企業に対してクロスカルチャーに関するコンサルティングサービスを提供しています。例えば、日本企業と中国企業の間でお互いに学びを深めるような場を提供するなどです。

以前、私はハイディラオの創業者を日本に招聘し、セミナーを開催したことがあります。いま日本では、本業でいかに社会課題を解決するか、についてとても関心が高まっています。そこでハイディラオの創業者を日本にお呼びし、日本人ビジネスマンとの対話を行う場を持ちました。参加者からたくさんの質問が出され、時間を超過しても、ひとりひとりの質問に真摯に答えていました。ハイディラオは、農村戸籍の人に対して、自らの手で運命を切り開くプラットフォームを提供し続けてきています。自分たちのできることを継続的に行動し続け、社会課題への挑戦をしているのです。このハイディラオの純粋な思い、そして行動に多くの日本人ビジネスマンが学びを深め、感動していました。

また日本企業を中国企業に紹介する活動も行っています。最近、中国人経営者たちを日本の星野リゾートにお連れし、高いサービス品質を実現する方法について学ぶ機会を提供しました。星野リゾートは、日本のリゾートホテルを経営している会社です。皆さんの中にも宿泊された方がいるかもしれません。このホテルはとても人気があり、お客様の満足度が非常に高いことで有名です。それは彼らがマニュアルに基づいてサービスを提供するのではなく、会社の理念に基づき社員一人ひとりがお客様に向き合い、対話の中で一人一人の「距離感」を把握してサービスを提供しているのです。結果、そのお客様にあった最高のおもてなしができ、満足度が向上するのです。

私たちの会社では、このような中国企業と日本企業が双方から学ぶ機会を提供しています。

これまでの異文化体験では、つらい経験をしてきました。12歳の時に初めて日本で生活を始めたときの体験。そして、27歳の会社が倒産した時の体験。つらい日々ではありましたが、これまでの人生に感謝しています。なぜなら、この体験を通じて、ある真理を見つけたからです。それは、「主体的に異なる文化・習慣の背景を理解すれば、自分自身のモノの見方が変わり、行動、習慣、そして結果さえも変えることができる」ということ。

皆さんの中にも、将来、海外に住み、自身の文化、習慣と異なる人と一緒に仕事をすることがあるでしょう。ストレスを感じ、そして孤独感を感じるかもしれません。そんなとき、ぜひこの真理を思い出してください。ご清聴ありがとうございました。

PFC Chinaでは、異文化コミュニケーション研修をはじめ、人材開発・組織開発・中国ビジネスに関する様々なコンサルティングを行っています。どうぞお気軽にpfc@peoplefocus.co.jpまでお問い合わせください。