GIAリーダー・プログラムが我々に教えてくれるもの~吉村浩一(シニア・コンサルタント)

スリランカでの2週間の体験学習を核とするGIAリーダー・プログラムのフェイズ2(現地体験)が終わりました。今回はこのプログラムに参加したシニア・コンサルタントの吉村浩一の体験と考察をご紹介します。

dsc_0288_%e5%90%89%e6%9d%91「GIAリーダー・プログラム ~新興国でのグローバル・リーダー育成~」は新興国ビジネスをリードする次世代グローバル・リーダーに必要な3つの資質(グローバル・イノベーティブ・オーセンティック)を併せ持つ21世紀のリーダーシップを、新興国での体験学習を軸に身につける、体験型のグローバル・リーダー育成プログラムだ。

GIAリーダー・プログラムでは、社会課題に対して、実際にその場に身を置き体験することが不可欠であり、その体験から強烈な当事者意識が喚起されることがリーダーシップの源泉となると考えている。それは、単に見学したり、見聞きしたりすることではなく、参加者自らが実践できる場を与えるということだ。出張でホテルから自社のオフィスや工場に行き、自社に勤める現地社員と若干の言葉を交わしたり、駐在員と食事したり、ということでは、その国を体験したことにはならない。とにかく海外現地を経験させることに躍起になっている日本企業はこの点を軽視しがちだが、これは「経験」でなく「見学」に過ぎない。真にその国を理解し、課題を見据え、ビジネスに繋げられるグローバル・リーダーとなるためには、その人がそれまでの人生経験で培ってきたものをも活用しながら、真に実践できる場を与えていくことが欠かせない。

GIAリーダー・プログラムでは、今年もスリランカでの2週間の体験学習の中で、政治家から現地企業の経営者、NGOスタッフ、未来を担う学生たち、そして都市部の家族、農村部の家族たちと触れ合う経験をし、そこで感じ、学ぶ経験を通じて自社のビジネスをどう展開するか、あるいは現地ニーズや社会課題の解決とビジネスをどう両立させるかといったテーマに向き合った。

 

スリランカの現状を思い知る体験

例えば、社会主義のスリランカにおいては、国を動かす政治家や各省庁がどのように国を考え、課題をどう捉えて、どう導こうとしているのかを把握することが欠かせない。各省庁の重鎮とのミーティングでは、国内に8つある世界遺産を活用し、観光客を呼び寄せる観光立国として外貨を稼ぎだすと共に、IT技術立国として発展させようという強い意志を聞いた。加えて今後は太陽光を活用したエネルギー、自動車関連のエンジニアリングを発展させようと考えていると言う。
また、仏教国であるスリランカは。物事の意思決定に宗教家の影響力がことのほか大きいことや、不確定要素が多い中で速やかに意思決定を行ないビジネスを進めていくビジネスピープルたちのスピード感など、興味深い見聞がいくつもあった。特にビジネスの展開スピードについては、日本がこのスピード感にどう応えていくかも課題と感じた。2030年にコロンボを世界有数のスマートシティにする、というプロジェクトが立ち上がっているが、中国や韓国がいの一番に手をあげている一方、日本企業は関心を示しているものの、正式なオファーが限定的である、という話を聞いても、日本企業のスピード感の遅さを感じた。

国や企業、宗教家などの人々の構想や取組みを把握する一方で、現地で生活を送る市民、村民のお宅にお邪魔をし、生活する体験もあった。ここで感じたのは、国の立派な構想から取り残された地方の現状だ。例えば、識字率や初等教育の高さはアジアでも有数を誇る国だが、高等教育、特に大学進学できる子供たちは10%程度。優秀な人材を国としてサポートをする仕組みが整う反面、大学に行けない人材に対する支援が大きく立ち遅れていることが気になった。加えて、第三次産業への就職が是というマインドセットが刷り込まれており、この国の強みである農業の開発が進んでいない実態にも気づく。

このような観点から、日本で開発している製品やサービスをベースに需要がある/ない、そして売れる/売れない、という発想ではビジネスとして成り立たないと言うことを思い知った。グローバル環境下においては、我々日本人が『当たり前』と考えている思考や習慣をもったまま事に当たると当然ながらフィットしないのである。

 

スリランカでの体験を通じて、自身のリーダーシップを見直す

そんな中で、スリランカのビジネスピープルとの協業や、他の参加者がリーダーシップを発揮する様などから、自身のリーダーシップのありかたを深く内省していた参加者のみなさんの姿が印象に残っている。

「スリランカのビジネスの進め方やスピードに驚いた、自分自身ももっと即応力をつけなければと思った」「自分のリーダーシップのありかたについての呪縛がとけた」「◯◯さんはリーダーとして強い牽引力があるが、自分には真似できない。自分なりのスタイルを身につけなければ」などのコメントが聞かれた。

GIAリーダー・プログラムでは、社会課題に対して実際にその場に身を置き、体験すること。その体験から強烈な当事者意識が喚起されることがリーダーシップの源泉(オーセンティック)になると考えている。

「ニーズはこちら側に見えることではなくて、向こう側が決めることだと気づいた」「もともとはお金を稼げる仕組みに作ればいいと思っていたが、それは(本当に彼らが求めている課題と)ちょっと違うのかなとも思った」という参加者もいたりと、スリランカでの体験は、参加者の心に大きな動きをもたらしたようだ。

 

GIAは筋書きのないドラマ

GIAは「見学ではなく経験」と冒頭に書いたが、経験には「筋書きのない」ものが多く、毎年何らかのちょっとしたドラマが起きる。

地方のBOP層のビレッジに滞在した時のことだ。参加者それぞれが別々の家に泊まり、彼らと寝食を共にするのだが、私も、農村部の中でも比較的生活が苦しいと思われる家庭に2日間お世話になった。土で作られた壁はひび割れ、床は土、当然ながら部屋にはドアも窓もなく、部屋の出入り口は布が掛けられている。そんな中で、自給自足しながら助け合って生きていることと、人に対する温かさなどをさまざまなおもてなしから実感し、私は改めて『この人たちが自立して生きていくために必要なことは何か?』と考え始めていた。

ところが、夜が更けてきたころに、いきなり通帳を見せられたのである。「No Money No Salary、家の修理ができない、お父さんは足を怪我している、お金を出してくれないか」と言う。加えてノートとペンを貸してくれ、と言って、自身の銀行口座を書き出し、振込先はここだ、と身振り手振りを交えて訴えてきたのだ。せっかく芽生えかけていた「この人たちに自分は何ができるのか?」という私の当事者意識が、この瞬間にスッと冷めてしまった。『自分に親切にしてくれたのは、金を持っている日本人に寄付をさせよう、という意図からだったのか?』と思ってしまった私は、悶々とした夜を過ごした。

翌朝、子供が部屋に「お母さんが朝ご飯を作っているから見においで」と誘いに来た。覗きにいくと、土窯の周りで一生懸命に郷土料理を作っている。「あなたもやってみるか?」とお母さんに言われ、一緒に手を動かしてみた。そうやって共に作業をし、彼らの言動を見聞きするにつれ、私の中に答えが生まれてきた。『確かに金の無心はしてきたものの、生活に苦しければそういう発想になるのは仕方がない事ではないのか?』と。そして自分自身の、貧困の中にある彼らに対するモノの見方や考え方が非常に限定的であることに気づかされた。そして最終的に『この人たちが自立していくために自分は何ができるのか?』という思いに改めて立ち返ることができたのだ。

 

GIAリーダー・プログラムが我々に教えてくれるもの

ややもすると、私をはじめとした多くのビジネスピープルには、日々の仕事でやることに追われ、且つ難しい状況をどうやりくりするか、に翻弄される行動傾向がある中で、異国での経験をきっかけに、立ち止まり、振り返ることは、オーセンティックなリーダーシップを確立するために欠かせないプロセスだと感じた。立ち止まって考え、自分自身を俯瞰してみることによって、状況や自分を多面的に考えるスペース(物理的・精神的余裕)が生まれる。他の参加者の中にも、今までの自分自身の考え方、ものの見方について「それでいいのか?」と突きつけられるような瞬間がいくつもあったと聞く。

VUCAと呼ばれる先の見えない今の時代、リーダーは絶対的な正解を瞬時に導き出すことは不可能であり、その時点での仮説を速やかに立て、各ステークホルダーとの経験を通じて検証をし、学びを創りながら当初の目的・目標の実現に近づけていく、という事を繰り返していくことが欠かせない。自身のあり方や信念や価値観と向き合わざるを得ない様々な現実と出来事に直面して、未だに明確に自分なりの答えも出せていないものもあるが、この先も自身に問い続けていきたいと思う。自身がGIAリーダーとしてどうあるのかを考える大いなるきっかけを得る旅となった。
GIAリーダー・プログラムのフェイズ3では、東京での振り返りとラップアップが予定されており、参加者の皆さんの中の気づきや変化、そして将来に向けての行動プランなどを伺うのを今から楽しみにしている。