HRBPに求められるグローバル組織開発コンサルタントとしての活躍~グローバル組織開発コラム(6)

(このコラムでは、グローバル組織開発に関する身近な話題を提供していきます。PFCのコンサルタントが不規則に担当します。)

第1回『ダイバーシティを推進する日本企業の現在地』はこちら
第2回『グローバル人材に必須の“英語を話す”力を高める唯一の方法(テストのウォッシュバック効果)』はこちら
第3回『グローバル化の促進を阻む大きな要因は、幹部の無意識の思い込み』はこちら
第4回『差別は、知性があるがゆえに生まれるもので、また、組織への帰属愛の裏返しでもある』はこちら
第5回『「本業を通じた社会貢献は当たり前」GIAリーダープログラムの参加者に現れた変化とは?』はこちら

matsu_seminar外資系企業では、HRBP(Human Resource Business Partner)を設けている企業は多い。文字通り訳せば、人事ビジネスパートナーだ。
ここ最近、HRBPの方々と仕事をする機会が多かったが、グローバル組織を牽引する彼らの活躍と課題を、接する中で体感したので、是非紹介したいと思う。

そもそもHRBPとはどのような役割を担い、何をする人達なのかということから確認したい。彼らは人事部門の一員ではあるが、実際の職場はビジネス側である事業部門にある。人事の側面からテクニカルで客観的なアドバイスをするにとどまらず、事業部長やラインの管理職と同等に事業環境を理解し、その事業固有の組織・人事の課題に対して、踏み込んだ提案や解決策の提示を行う役割を担う。
多くのグローバル企業においては現在、人事の役割は、1)HRBP、2)報酬・採用・労務・人材開発等の人事領域の専門家集団、3)人事データや日常の人事業務をこなすHRオペレーション(HRシェアードサービス)、の3つの柱に分かれて、それぞれに機能分担して進めるようになっている。
3つの機能の中でも、グローバル組織においてはHRBPの重要性がますます高まっており、日本でも外資系企業を中心としてHRBPの人材強化を図る企業は多い。積極的に海外展開をし、グローバル経営を行う企業にとっては、グローバル本社からトップダウンで各部門の人事戦略を組み立てることには限界がある。日々変化し多様化する人材需要・教育・管理を一括して把握するのは、非常に困難だからだ。グローバルに展開する各事業が必要とする人材を、迅速に獲得し、適切に配置・維持・育成していかなければならないが、HRBPはその中核として事業に積極的に関与していくことが求められる。そのため、社内の各事業部門等につく形で、独立した立場から事業部門のトップに提言していくスキルが重要となるのだ。
従って、HRBPは、グローバル展開による事業の複雑化に対応するためのスキームだと言っても過言ではない。

HRBP人材は、絶対的に不足している。業種にかかわらず汎用性の高い通常の労務・人事職の業務とは異なり、人事の知識に加え、事業そのものおよび、当該事業部門の人材の育成やマネジメントの深い知識が必要となるため、HRBPの人材確保に困難を感じている企業が多い。提言能力や問題解決能力も重要で、言わば社内コンサルタントのような役割も求められるのでなおさらだ。
そのような折、最近私が遭遇したのが、「HRBPは極めて一生懸命に事業部門に寄り添い、事業部門の抱える課題を解決しようと、事業部門に様々な提言をしていた。そして、優秀で提言能力も高かった。しかし、提言の向かう先が、日本の事業部門だけではなく、グローバル本社にもあってもよかったのではないか。」と感じたケースだ。

この企業では、最近、グローバルの本社主導で大きな組織変革を行った。日本の事業部門の抱える最大の課題は、この組織変革をいかに効果的に進め、成功させるかということだった。従って、HRBPは、この組織変革がスムーズに行われるように奔走した。我々も、ワークショップによる支援を行った。
組織再編のワークショップでは、リーダー達が集まり、どのような組織にすれば、グローバル本社が意図するコンセプトが実現するか、どのようにすれば、顧客に迷惑をかけることなく、組織再編を円滑に進めることができるか、といったことを話し合った。
リーダー達は、グローバル本社からの指示を、真摯に受け止め、何とか実現しようとしていた。しかし、その際、リーダー達の反応から観察された行動は、こうした行動が組織再編のスムーズな始動に一役買っていたことは確かだったと思うが、しかし、あまりにも従順すぎるように感じた。もっと「本社へのチャレンジ」が生まれてこそ、もっともっと健全な組織運営になるのではないか、ということを感じた。

というのも、この会社では、「本社からのコントロール(意思)」は必ずしも高くなく、その証拠に、“ギチギチの”レポートラインは存在しておらず、元々ローカルに委任する傾向は高いと見られた。
その背景には、「日本のプレゼンス」が極めて高いことがある。グローバル本社が本気で日本を重要視していることが伺える、日本への投資の高さは群を抜いていた。
そして何より、日本発でグローバルに展開される技術やサービスも少なくなく、日本の実力に相当な自負を持っている日本のスタッフは極めて多かった。
上記のような状況を踏まえると、このようなグローバル本社主導での組織変革などの折には、もっと「本社へのチャレンジ」が生まれても不思議ではない環境条件が整っていると思うが、しかし、実際は生まれていないことが最重要課題ではないかと感じた次第だ。

この企業では、日本の事業部門は、本社から、「向上心や自立心をもっと持て」と促される状況にあると後から聞いた。グローバル本社の言うことを聞く従順な姿勢は、ある程度を超すと、むしろ不安になるのだろう。
そうした認識がグローバル本社にある結果、グローバルから“エクスパット”が来て日本人が上に行けないことが繰り返されていた。
日本の事業部門のトップであった外国人エクスパットが、この組織変革を終えて、本国に帰ることになった。その際、後任もやはり、本国からエクスパットが送り込まれることを、彼はとても残念がっていた。そして、自分の在任期間中に、そういう組織を開発できなかったことを、とても悔やんでいた。
そうした話を聞くにつけ、実は、HRBPが事業部門の真の課題として取り組むべきは、「グローバル本社からの組織変革を成功させること」ではなく、むしろ「グローバル本社へのチャレンジを生むこと、その風土づくり」だったのではないかと、組織変革を支援した私自身が感じている。
今回の経験を通じても、グローバル組織変革ではなく、グローバル組織開発が、HRBPの今後の重要な取り組みテーマの1つになっていくであろうと確信している。