なぜグローバル人材が増やせないのか〜組織開発の5つの視点から考えるグローバル人材の育成と活用

2017年3月1日、『グローバル組織開発ハンドブック』出版記念セミナー「なぜグローバル人材が増やせないのか〜組織開発の5つの視点から考えるグローバル人材の育成と活用』が、東洋経済新報社の協力で開催されました。

グローバル人材・グローバルリーダーの育成は、多くの日本企業に取って最優先かつ喫緊の課題でありながら、順調に進んでいる企業は多くはありません。さらに、どうにか研修等でグローバル人材の育成を進めているとしても、彼らが活躍する土台となるグローバルな組織作りまで取り組んでいる企業はごくわずかです。

1488347379010では、どうしたらグローバル人材の育成、そしてグローバルな組織作りが実現できるのでしょうか?

本セミナーでは、「なぜグローバル人材が増やせないのか」をテーマに、これまで日本企業が見逃してきたグローバル人材の育成の方法や、グローバル組織開発の意義や手法について、組織開発の最前線を行くピープルフォーカス・コンサルティングの経験豊富なコンサルタント陣がご紹介しました。

【第1部】周回遅れの「人と組織」のグローバル化

あなたの会社では、グローバルリーダーやグローバル人材は順調に育っていますか?グローバル人材は定着していますか?グローバル人材が活躍できる職場が提供できていますか?健全かつ強固な組織が、グローバルに実現できていますか?

 必要なのは組織の改革ではなく「開発」
前著『組織開発ハンドブック』からPFCが定義してきた、成功する組織のふたつの特徴(賢明であること・健全であること)、組織は「賢明さ」だけでは良い方向に向かいづらく、「健全さ」が欠かせないことなどが説明されました。1
この「健全な」組織作りに必要なのは、「組織改革」ではなく「組織開発」。外科手術ではなく漢方薬や日頃の運動、一握りの改革者ではなく社内の一人一人が主人公になる、「変える」のではなく「変わる」など、環境変化に対応できる日常的な体質作りとしての、組織開発の要点が紹介されました。

組織開発の5つの視点と組織開発の定義
PFCではこの組織開発を、下記の5つの視点から考え、そのゴールとして「優れたリーダーシップにより統率され、効果的なチームワークにより支えられ、多様なメンバーが価値観を共有しながら一体となって、変革を推進し、継続的に成功する組織をつくる」を提唱しています。2

 

なぜグローバル人材を増やせないのか?
多くの企業が、グローバル人材育成に躍起になって取り組んでいるのに、なぜ増やせないのか。「グローバル人材の採用や育成のみを行なっていて、組織開発の視点が欠けている」からではないかという問題提起がなされました。「グローバルに組織開発されていないと、そもそも応募してこない、せっかく採用した人も居つかない、育たない」という悪循環を根本から絶たなければ意味がないのではないかということです。自組織のグローバル度を測る12項目の質問が投げかけられました。この質問チャートは、実際に様々な企業のワークショップでも使用されていて、この質問への自己評価を元に、自社のグローバル組織開発のために必要な様々な議論を展開しています。

質問項目の例:
1.海外法人の社員も含めた経営理念の浸透
2.海外法人の社員も含めた組織目標と方針の共有
3.グローバル市場を視野に入れた戦略立案
4.グローバル最適を視野に入れたオペレーション体制の確立

グローバル組織開発を難しくするCSPの壁
次に、グローバル組織開発ハンドブックのサブタイトルにもなっている「3つの複雑性」すなわち下記のCSPをご紹介しました。組織開発とグローバル組織開発とで、本質的な取組みの内容が変わるわけではありませんが、この3つの要素が、グローバル環境下での組織開発を難しくしているのです。3

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【第2部】事例紹介:グローバルな組織作りに必要な5つの要素

第2部では、第1部で紹介された5つの要素と3つの複雑性(CSP)を切り口に、グローバルな組織開発、人材開発の事例をご紹介しました。

1)チーム
海外パートナーとチームを組んで恊働を始めた国内A社が、蜜月を経て失望・停滞に至ったケースを取り上げました。欠けていたのは「「和」を以って尊しとなすのではなく、むしろ「異」を以って尊しとなす」という考え方。グローバルなマトリックスチーム運営の肝や、グローバルなマルチカルチャーチームを作るために必要な低コンテクストの(コンテクストではなく言葉を重視した)コミュニケーション、あるいはバーチャルチームの運営などについてご紹介しました。

グローバルなマトリックスチームの運営については、

  • コンフリクト(対立)が起きないような仕組みづくり
  • コンフリクトが起きたときの解消方法をあらかじめ決めておく

など、A社のチーム作りの施策を紹介。

異文化環境下でのコミュニケーションについても、「わかりました」の言葉ひとつとってみても「内容がわかりました」なのか「そのことにコミットしました」なのかは、日本人同士なら以心伝心で伝わることがあっても、異なる文化背景をもつ人々の間では、ミスコミュニケーションが起きがちです。言葉で正確に伝え、お互いに確認しあうことの大切さなどが語られました。バーチャルチームにおけるコミュニケーションを円滑にするには、「英語力を伸ばすのではなく、今もっている英語力で何とかする」ためのコミュニケーションスキルを鍛えたことなどが紹介されました。

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2)ダイバーシティ
ダイバーシティ(多様性)のパートでは、分離・同化・統合の3つのアプローチと事例が紹介されました。

同化アプローチ
日本企業の多くは、ダイバーシティ推進にあたり「同化」のアプローチをとってきた。同化とは、マイノリティ(少数派)に対し、マジョリティ(多数派)のやり方に倣うことを求めるやり方で、せっかく取り込んだ異質人材に同質化を強いるもの。

分離アプローチ
異質なものを本流とは別に切り離して隔離して扱うアプローチ(例:中国のマーケティングは中国人のチームで、シニア向け商品の開発は当事者であるシニアのチームでといったやり方)。海外での日本企業の不人気の理由の一つとして、海外拠点での「分離」アプローチもあげられる。

統合アプローチ
ワールドワイドで本来の意味でのダイバーシティ・マネジメントを実現している企業では、統合アプローチが取られている。このアプローチは、マイノリティが活躍できるように、組織の仕組みを変革したり、新たな風土を築いたりするというものだ。統合アプローチでは、異質なものを同質化することなく異質なまま、そして異質なものを隔離することなく受け入れる。

事例として:

  • 多様な人材がいれば、視点も多様になり、創造性に寄与する
  • 異質なもの同士の化学反応でイノベーションが生まれることもある

といった観点から、管理職の意識改革やパフォーマンスマネジメントの仕組みの徹底等に取り組んだB社が紹介されました。

3) バリューズ
グローバルにバリューズを浸透させることがなぜ必要なのか?

  • 世界に散らばる多様な人たちとその価値観を一つにまとめるには、強い求心力が必要になる
  • 各社員の、企業バリューズに対する「想い」によって、組織としての統制がとれることになる

など、バリューズ浸透の必要性をお話したあと、実際にPFCの支援でグローバルにバリューズ浸透を行なったC社での事例を、様々な手法とともにご紹介しました。

下記がバリューズ浸透の具体的な5つのステップです。
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たとえば、二つ目の「引き出す」のステップでは、全世界の一般社員を対象に「ハイポイントインタビュー」「バリューズカード」「バリューズ・アイスバーグ演習」などの手法を用いながら、社員ひとりひとりのもつ価値観を引き出し、次の「結びつける」のステップで組織のもつ「バリューズ」とリンクさせました。このステップで個々の価値観を引き出し、個としての自立を尊重してこそ、企業バリューズが受け入れられやすくなり、自国の文化が自分の価値観にどう影響しているかを学び、気づきを促すことも可能になります

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4)チェンジ
変革をグローバルに行なう際にもCSPの壁が立ちはだかります。そして、つい「仕組み」の変革に注力しがちですが、「ソフト」面の変革こそが成功の鍵、という観点からD社の事例が紹介されました。
グローバルな変革に取り組むにあたって「ハード先行、ソフト面は放置」という状況にあったD社には、下記のような課題がありました。

  • 社内でのグローバルな協業は限定的で日本人主導で進められていた
  • 国ごとにばらばらに取り組みが進められ、ダブりも多かった
  •  各国の現地一般社員の巻き込みが不十分で、取り残されていた
  • 日本本社のグローバル対応が遅れていた

PFCの支援でD社が取り組んだのが下記のような変革プログラムです。

  • 変革プログラムの策定
  • 全体統一と現地適合のバランス決め
  • 変革実行体制の整備
  • 変革のベクトル合わせ
  • 変革実行のグローバル展開

セミナーでは、それぞれの段階での興味深い取り組みやエピソードがいくつか語られましたが、ここでは最後のフェーズ「変革実行のグローバル展開」で必要となるロールアウトとロールインについてご紹介しましょう。
「変革を日本から始めて、世界へ広げる」、これがロールアウトです。
一方、「海外から始めて、日本や世界へ」というのがロールイン。
D社ではロールインの手法をとり、海外拠点が「変革勢力」となり、健全な「外圧」によって本社や人事部に変化を与えることに成功しました。

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変革を促す


【第3部】グローバルリーダー育成の最前線

第3部は、リーダーシップやグローバルリーダーに関する様々な定義や学説もご紹介しながら、参加者の皆さんに様々な問いが投げかけられ、スマートフォンを使ってその場で意見を集め、結果を投影するなど、インタラクティブに進められました。

アンケートのひとつがこちら。
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その場でリアルタイムに結果も共有。
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リーダーとグローバルリーダーは本質的には変わりはないが、国内で成功していても海外でうまくいかないリーダーや、外資系に転職して成果が出せない事例も散見するので、グローバルリーダーならではのあり方、考え方、スキルなどが必要ということで、下記のスライドもお見せしました。
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さらにPFCの考えるグローバルリーダーの定義をご紹介。
・グローバルリーダーとは、地球規模の最適化を常に 考え、国や文化を超えた人々を束ねて変革や革新を実現する人
・さらに、多様性を受容しつつ、自社の価値観を伝達・浸透できなければならない

皆様も、ぜひ自社が求めるグローバルリーダー像を明確にするべし。それが、グローバルリーダー育成の第一歩となります。そうしないと、英語教育以外にどうしたらいいのかわからなくなります。

地球規模の最適化というとトップだけの仕事と思うかもしれませんが、以下のようなことが当てはまるのです。
 ・自社の最適なバリューチェーンをグローバルに構築する
 ・自分が打ち出す施策が、地球の反対側にいる人たちにどう影響するか想像できる
 ・自分の業務のベストプラクティスについて世界全体から学ぶ
 ・自社が地球的課題に与える影響や貢献しうることについて考慮する

次に紹介されたのが、グローバルリーダーに求められるABCDEFの6つの資質です。
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この他にも、
・グローバルリーダーとはどんな人か?
・自分の会社にグローバルリーダーといえる人は十分にいるか?
・自分の会社では、グローバルリーダー育成に取り組んでいるか?
といった問いに、参加者の皆さんにもスマートフォンからお答え頂きながら、セッションは進んで行きました。

参加者の皆さんからのコメントを見ても、自社でのグローバル人材の不足や育成への取り組みの不十分さに触れたものが多く、大手E社での事例には注目が集まりました。
E社では、30歳前後の選抜社員50名を対象に新興国での5週間のプロジェクト体験を中心としたプログラムを実施してABCDEFを鍛えています。
PFCでもその簡易版として2週間のスリランカ滞在をメインにした「GIAリーダープログラム」を実施しており、最後にそのご紹介もさせて頂きました。

<関連プログラムのご紹介>
リーダーを育成する
GIAリーダー・プログラム
グローバル・エンゲージメント研修

PFCではグローバルな組織開発・人材開発に関わるコンサルティングや、研修プログラムの提供などを行なっております。公開講座等も開催しておりますのでご関心をお持ちのものがあれば、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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