グローバル化の促進を阻む大きな要因は、幹部の無意識の思い込み~グローバル組織開発コラム(3)

matsu_seminar(このコラムでは、グローバル組織開発に関する身近な話題を提供していきます。PFCのコンサルタントが不規則に担当します。)

第1回『ダイバーシティを推進する日本企業の現在地』はこちら
第2回『グローバル人材に必須の“英語を話す”力を高める唯一の方法(テストのウォッシュバック効果)』はこちら

無意識の思い込みほどたちの悪いものはない。
気づかないので、直しようがないからだ。

例えば、グローバル化が進み内包する異文化多様性が増す中、社員各人が持つ宗教の違いは、繊細に対応しなければならない問題であるが、日本の文化で育った日本人にはなかなか理解できないことが多い。いや、気が付かないことが多い。例えば、海外から届くクリスマスカードに最近「Merry Christmas」と書いていないことに、どれくらいの人が敏感に気づいているだろうか。

クリスマスカードなのだから、当然挨拶は「Merry Christmas」だろうと無意識に思い込んでいないだろうか。しかし、「Merry Christmas」はキリスト教徒であることを前提とした挨拶であるため、多国籍企業では使えないことは、グローバル化の進んだ企業では常識だ。「Season’s Greeting」の方がダイバーシティを配慮したスマートな挨拶状なのだ。

ある企業では、海外赴任前研修の場で先日、ある幹部が次のように発言をしたことがあった。「海外赴任で、婚期を逃すことになったら申し訳ないなあ。」この無意識に発せられた発言が、ダイバーシティプロジェクトで議論の的になった。
結婚というプライベートな話題を持ちだしたからではない。
この発言をした幹部は、そもそも結婚とは必ずするものということや、結婚するのは日本人といった無意識の思い込みの前提を置いていることが分かるだろうか。そして、海外に出ることで、結婚相手のパイがむしろ広がるという発想は、はなからないようだった。こうしたものは価値観に根差した無意識からの発言なので、とても根深いものだ。

別の事例では、海外赴任から戻ったばかりで、課長に昇進することが決まったある企業の女性リーダー数人を集めて、人事担当役員が激励する場面に居合わせた。「女性はこれから、子育て・介護をしながら管理職になるのだから、男性以上に不退転の決意をもって」と発言して、参加者たちから総スカンをくったのを目の当たりにした。彼女たちの見解はこうだ。「子育て、介護を女性の仕事と決めつけている。」「たかだか課長になるのに、なぜそんな不退転の決意が必要なのか?男性課長がそんな決意をしているように感じないが、男性にも同じことを言っているのか。」「仕事に魅了されて一人で新興国に開拓に行ってきた。治安の悪い海外では、女性への暴力やレイプのリスクと隣り合わせで仕事している。こういうハラのくくり方があることを知ってほしい。」
彼女達は、会社の取り組みが、女性管理職を増やす=子育てとの両立に終始していることにとても違和感があると言っていた。さらには、子供を育てていないと女性は人間として一人前でない、という根強い価値規範があることに疎外感を感じるとまで言っていた。

製薬会社に勤めるRさんは、新卒採用で外国人社員が増えているので、恒例の新人研修である病院での1週間の高齢者介護体験を外国人にもやらせようと発案したところ、人事の幹部および窓口になっている営業の幹部から猛烈な反発をくらったという。そんなことを病院や患者側が受け入れるわけがないと。しかし、Rさんの熱意で外国人の介護体験が実現し、やってみたらば、高齢の患者さんから、外国人も日本人と同じように温かく、熱心に介護してくれてすばらしい!と感激の手紙をもらったという。「外国人には無理だ」「外国人は日本人より不真面目だ」、といった無意識の思い込みが日本人は強すぎるのではないかとRさんは言っていた。

無意識に思い込んでいることが覆った経験があると、人間柔軟になっていく。真にグローバル企業になっていくためには、幹部が自身の無意識の思い込みに向き合うことが欠かせない。

(松村卓朗)