ダイバーシティを推進する日本企業の現在地~グローバル組織開発コラム(1)

(このコラムでは、グローバル組織開発に関する身近な話題を提供していきます。PFCのコンサルタントが不規則に担当します。)

第1回:ダイバーシティを推進する日本企業の現在地(松村卓朗)

matsu_seminarあけましておめでとうございます。
本年も、昨年に引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。
昨年末に「グローバル組織開発ハンドブック」を上梓しましたが、さらに引き続いて、グローバル組織開発に関する身近な話題をコラムにして提供していきたいと思います。

なお、「グローバル組織開発ハンドブック」の出版記念と称して、内容のエッセンスや、本では取り上げることができなかった具体的な取組み事例などをご紹介するイベントを、来たる2017年2月23日(木)に行うことを予定しています。
詳細が決まり次第、あらためてご案内を差し上げます。

さて、第1回のコラムでは、昨年末、私自身が非常に衝撃を受けた出来事を紹介したいと思います。グローバル組織開発の重要性をさらに訴えていかなければと心に誓うことになった出来事でした。


先日、母校の大学のゼミの教授に、20年ぶりくらいにばったり出会った。
アメリカに留学されたっきり音信が途絶えていたので、久々の再会に私はとても嬉しかった。先生は後にも先にも大学院のゼミしか担当しておらず、私の代は先生が担当した唯一の学部のゼミ生だからということもあるからか、先生もとても喜んでくださった。
先生は、現在も母校で国際経済法の大学院で教鞭をとっているということだったが、私が会社で最近「グローバル組織開発」に関する本を出したと知って、先生から「大学院生達に一度講演をしてくれないか」と依頼があった。
大学院生に講演する機会など持ったことがなかったが、私は大学時代ろくに勉強もせずに先生には大変迷惑をかけっぱなしだったので、罪滅ぼしの気持ちもあって、引き受けることにした。

先生からは、大学院生はアジアからの留学生が多いということで、日本での就職についてのガイダンス的な内容を求められた。
他に講演のスピーカーとしては、日本企業の採用担当者や、日本企業に就職した中国人留学生も呼んでいるとのことだった。
そこで、私は、まず、もう25年も前になるので参考になるとは思えないが、自分自身の就職活動のときに考えたことが今どのように活かされているかということを話した。それから、日本企業のグローバル組織開発の現状についての話に時間を割いた。日本企業のグローバル組織開発は、留学生の日本企業への就職に大いに関係があると確信していたからだ。話の筋は次のようなものだ。

ご存じのように、多くの日本企業では、今、ダイバーシティ推進に取り組んでいる。かつての日本企業は、「同化アプローチ」一本槍だった。しかし、今ではダイバーシティを進めており、それも「分離アプローチ」ではなく、「統合アプローチ」を目指す企業も出てきている。
同化アプローチというのは、例えば外国人に対して、「日本人のように日本語を話せて、日本人のように振舞えるなら、採用してあげる」というアプローチだ。分離アプローチは、「ベトナムに進出するからベトナム人を雇って、ベトナム人だけの組織を作る」といったアプローチだ。そして、「統合アプローチ」というのは、国籍や性別や属性ではなく個人の能力を見るもので、異質な人材が活躍しやすいように組織を変革し、まさに、真のダイバーシティを標榜するアプローチだ。
今現在、海外で日本企業は就職先として人気がないが、ひとえに、こうした統合アプローチがとられていない、即ちグローバル組織開発ができていないからというのが我々の見立てだ。
しかし、統合アプローチを目指す企業も徐々に出始めているし、私達は、さらにその促進を支援したいと考えて、グローバル組織開発のコンサルティングを行っている。
多くの日本企業がグローバル人材を欲するが、グローバル採用市場で苦戦する中、皆さんのような日本に留学していて少なからず日本や日本企業に関心を抱いている人材は、引く手数多のはずだ。是非日本企業への就職を積極的に検討してほしい。

そういったメッセージを伝えて話を終えた。

ところが、次に出てきたスピーカーの話を聞いて愕然とした。5年前に大学院を卒業し日本企業に就職した中国人留学生だった。現在は日本を代表する某企業に勤めている。彼の話を要約すると以下だ。

皆さん、日本企業に就職するには、完全に日本人にならないといけない。日本人のように振舞い、日本人のような行動ができなければならない。
例えば大学院では、英語なんて勉強する必要はない。就職してからいくらでも英語を勉強できる機会はある。日本企業に就職するためには、日本語を完全にできるようになることだ。留学生なのだから、日本語はある程度できると思っているだろうが、企業で求められる日本語はそんなものではない。アメリカ人や中国人との対話なら「Yes」「No」とはっきり分かるところ、日本人との商談の場合は、極めて曖昧な話しぶりから、「Yes」か「No」かを読み取る日本語力がないと使い物にならない。

彼は、「日本人よりも日本人ぽい」と言われることが、とても嬉しいと語っていた。

講演の後、大学院の生徒達との懇親会があったが、私の話とこの中国人の方の話とが対照的で、非常に興味深かったという感想をもらった。多くの日本企業は、ダイバーシティを推進しようと頑張ってはいるが、まだまだ現実はほど遠いということだろう。
しかし、だからといって、あきらめるわけにはいかない。現実が変わらないままでは、この中国人の方のように、日本人になりきろうとし、「完全に」日本人になりきれた人だけしか日本企業には集まらないことになってしまう。
この一件は、私にとって、ますますグローバル組織開発の重要性を認識することにつながり、そして、多くの日本企業の皆さんにその重要性を訴えていかなければと心に誓うことになった出来事となった。(松村卓朗)