【ジャンゴのちょっといい話:田岡純一】柔道日本復活をもたらした井上康生監督から学ぶリーダーシップ

taoka_new2016年 8月5日から8月21日までの17日間、ブラジルのリオデジャネイロで開催された第31回夏季オリンピックも終わり、9月7日からはパラリンピックが9月18日まで開催されようとしています。
今回のオリンピックにおける日本チームの活躍は素晴らしかったですね。おかげで睡眠不足になったなんて方も多いのではないかと思います。多くの感動的なシーンがあったと思いますが、今回はその中でも最多のメダル男女合わせて12個、特に男子は金メダル2つを含め全階級でメダルを獲得した日本柔道に注目してみたいと思います。この日本柔道復活のキーマンはなんといっても井上康生監督ではないでしょうか。
帰国後のインタビューやマスコミから発せられる情報を読んでいると企業にとっても、また部下を持つ多くの管理職にとっても大変参考になる内容があるように思います。

■従来のやり方からの脱却
柔道のような伝統的なスポーツは特にそうだと思いますが、過去の成功体験が多くあり、その手法を改めていくことが環境的にも難しい状況にあります。伝統を受け継ぎ、精神論、根性論だけで体をいじめ鍛え上げていくアプローチをとりがちになります。そんな中、井上監督は冷静に日本柔道を強化するための視点から、いいものは残し、悪しきものは変えていく決断をし、実行していったようです。
従来の典型的な「量」を重んじるやりかたから「質」の高い練習への転換です。
ボディビルの専門家を招き、筋力、持久力の科学的トレーニングを取り入れたり、栄養学の専門家にも相談、トレーニング、食事、休養のバランスを考えてスケジュールを組んだり、また試合の対策も、従来のように、ただビデオを見て策を練るだけでなく、対戦相手の癖、特徴はもちろんその国にある昔からある格闘技のルーツも探り、技への影響も研究。もちろん日本代表選手個々の長所、短所、フィジカルなどもデータ化し、強化を図ることも実施したようです。

経営に携わる方々が自らの過去の成功体験を押し付け、「なぜ君たちはできないんだ。自分達はやってきたんだ」と詰め寄ってしまう構図は、過去に成功を収めてきた組織だからこそ、陥りやすく気をつけるべきポイントではないでしょうか。時代は変わり世界での戦い方、競争ルールは変化してきています。
その変化を評価判断するのではなく、事実として受け入れ、いかに前向き対応するかが問われているのではないでしょうか。

■選手の主体性を活かした育成
井上監督の話を聞いていると選手のポテンシャルを信じ、主体性を引き出そうとしている様子が伺えます。
トレーニングプランを立てる際も選手とコーチが話あって決めているとのことでした。代表に選ばれるくらいの選手ですから、十分な経験と知識もあります。それに対して敬意を払いきちんと意見も求める。そのうえでコーチや専門家のアドバイスも交え、具体的に決定しているとのことでした。
また柔道界に不祥事が相次いで発生したこともあり、いろんな面で厳しい規則を設け縛ろうとする動きもあったようですが、それも最低限にとどめ選手の主体性を尊重し、良識に任せることにしたようです。
ただし、そのための正しい理解も必要なので、例えばSNSの正しい活用方法といった勉強会なども開催したようです。
また選手の主体性に任せるといっても放任するわけではなく、必要なタイミングでタイムリーなサポートが細かくできるよう、階級別のコーチ制度も復活させたそうです。

仕事の現場でも結果がでないと、つい上司の指示命令が多くなります。ましてや過去の成功体験が多くある上司にはその傾向が強いようです。上司の指示通り実行して結果を出しても、部下が感じる達成感は概してそんなに高くはありません。また結果が好ましくなかった場合は「上司の指示通りやったのだから自分は悪くない。」との思いが強く、あまり責任感を感じないということになりがちです。しかし自分が考え行動した場合はどうでしょう。もちろん好ましい結果がでれば達成感も嬉しさも大いに感じるでしょうし、仮に残念な結果の場合でも責任感をしっかり持てるのではないでしょうか。
ここに上司や先輩や専門性のあるスタッフが上手に関わり、本人の意見も尊重しながら一緒に共通の課題について意見を交換しながら取り組んだ場合はどうでしょうか?結果に対し、ともに喜んだり、責任を感じたりするのではないでしょうか?
今回のオリンピックの舞台ではそんな数多くのシーンが見られた気がします。

真剣に取り組みながら頂点を目指す戦いには、共通の要素が多くあるように思います。
2020年の東京オリンピック、パラリンピックでは、それを生で味わうことができる貴重な機会だと思います。そう思うと今からワクワクします。