【ジャンゴのちょっといい話:田岡純一】ラーニングカルチャーの3つのポイント

taoka_new今回もアメリカのデンバーで開催されたATD( Association for Talent Development)のICE(インターナショナルカンファレンス&エクスポジション)に参加して、私が感じた人財育成、タレント開発分野における潮流について述べてみたいと思います。

まずBUZZ WORDとしてATDの会長であるトニー・ビンガム氏が口にした「ラーニングカルチャー」があげられます。ラーニングカルチャーがある組織は教育への投資効果も高く、業績も向上している点に触れ、具体的な企業としてSAP、KOHLER、アクセンチュアを例にあげると同時に各企業のCLOがラーニングカルチャーをどのように育んできたかについて、ビデオで紹介されました。

そしていま今回のATD-ICEの内容を振り返ってみると、このラーニングカルチャーに紐づくセッションが数多くあったように思います。
ラーニングカルチャーを育んでいく上で特に以下の3つポイントがあったように思います。

1.学習性を高めるマインドセット
ここでは3つの立場があります。
 <学習者の上司>
昨今、目標管理制度においてNO RAITINGという考え方を取り入れている企業が増えてきています。
これは評価をしないという意味ではありません。評価制度の仕組みの中で多くのコンピテンシーを評価しても、部下自身が成長を感じていない、あるいはパフォーマンスが向上していないという事実。それどころか従来のレイティングや相対評価を実施することでエンゲージメントやモチベーションの低下、上司と部下の関係性の悪化にいたっているとさえ言われています。
本来の上司の仕事は部下を評価することではなく、育成を通じパフォーマンスを改善、向上することです。そのためには日々の声掛けやサポートが大切になってきます。現在米国の企業では週1回のチームミーティング及び月1回の部下との個人面談を実施しているところが増えてきているようです。そのためか今回のATDでもコーチングに関するセッションが多くありました。
VUCAの時代において部下と関わる頻度を上げていくこと。また多忙な中で関わる際の効果的な関わり方に興味関心が高まっているようです。以前にも紹介したスタンフォードのキャロル・ドゥイック教授の話にもあったように現状の目標管理制度の評価はフィックストマインドを醸成してしまいます。グロースマインドセットにつながるコーチングスキルが上司に求められています。

<学習者自身>

自分の強みを把握し仕事で積極的に活用する。
上司と強みと改善課題について意見交換する。
また仕事における価値観や今後のキャリアビジョンについても意見交換を積極的にしていく。
会社や部門の方向性と自身の目標(短期)、キャリアビジョン(中、長期)をすり合わせていくようなコミュニケーションを上司と行う。
といったことが、学習者自身に求められます。

<人事、教育部門>

学習者を中心に置いて人財開発をしていく”LEARNER CENTERED”。学習者が成長しパフォーマンス向上していくための具体的な取り組み課題が何なのか。
また解決するためのアプローチにはどんな方法があるのか。
学習を実践に移し、具体的な成果や自信につなげていくためのサポート方法は。上司との連携はどうしていくのか。
個々の学習者に寄り添った形で取り組んでいく姿勢が求められています。

2.学習の在り方、捉え方
学習を単なるイベントではなく、成長やパフォーマンス向上につなげるジャーニーとして捉える意識はより一層高まってきている印象です。CCLが1980年代に発表したリーダーシップ開発に有効だった要素70:20:10の法則(70%は経験から、20%は他者から、10%は教育研修から学ぶ)が頻繁に紹介され、一番大きなウエイトを占める業務上の経験を上司と連携しどうサポートするかが学習をパフォーマンスにつなげるキーサクセスファクターになってきています。
・研修前に上司との面談を持って参加目的及び現状の課題を明確にする。
・研修中はその課題を主催者側も把握し解決策が持ち帰れるようサポートする。
・さらに研修後は課題を解決するためのアクションプランを上司のサポート(コーチング)を得ながら結果がでるまで取り組む。
等が欠かせません。

3.脳科学の活用
ここでは2つの具体的な切り口が紹介されていたように思います。
1)マイクロラーニング(バイトサイズラーニング)
学習者の集中が一番高いのは90秒といったデータをベースに2分~3分程度で学習できるコンテンツ制作のニーズが高まっています。特に数分のビデオ教材が簡単に作れるようなプラットフォームも紹介されていました。

マイクロラーニングが注目されている理由としては
・時間を有効に使える
・ラーニングトランスファーの効果がある(進捗が見やすい、常に学ぶ学習文化の醸成)
・ミレニアム世代のニーズ(頻繁な承認)と合っている
 
2)安全で安心できるチーム環境をつくる
ひとつの切り口としては以前紹介したSCARFモデルのような、不安や恐れを職場から取り除く取り組み。さらには前回のブログでご紹介したサイモン・シネック氏が語ったようなポジティブな感情を生み出す物質が多く生成されるような取り組みを多く実践することが挙げられます。

以上がATD-ICE2016に参加して強く感じたことのまとめになります。結果的には皆が自分らしさを発揮しながら幸せを感じられるような職場をどう実現していくのかという普遍的なテーマと、今後の就労人口の大半を占めてくるミレニアル世代に合ったタレント開発にどう取り組んでいくのかという大きな2つのテーマがあるように思います。

基調講演のレポートは下記でもご覧頂けます。
リーダーの仕事はメンバー全員が安心、安全だと思える環境を創ること

(編集者より)
上記内容等もふくめた、ピープルフォーカス・コンサルティング主催のATD報告会での配布資料を、クライアント様限定で無料で差し上げています。最新の組織開発・人材開発の潮流がわかるこのレポートをご希望の方は、担当コーディネーターもしくはpfc@peoplefocus.co.jpまでお申し付け下さい。