ビジョンを持つことは大切です。
私たちは何かをしようとするときに必ず何らかのビジョンを持ちます。行きたいところがあれば自然と思い浮かべます。やりたいことがあればやっていることを想像し、作りたい物があれば出来上がった姿を思い描きます。
ビジョンを描くのは自然なプロセスの一部なのです。私たちは、行き先があるから行くことができ、目標を持つから力を結集できるのです。
しかし、これが企業経営や事業運営などで過度に強調されてしまうことがあります。
あたかもビジョンさえ共有すれば問題が解決するかのごとき幻想を持つ人がいます。そればかりか現実離れしたビジョンを描いて、現実を見ようとしない人も出てくる始末です。
もちろんこれは間違いです。
私たちは常に現実を直視する必要があります。いったい今、何が起きているのか。課題は何か。機会は何か。リスクは何か。不確実なことは何か。確実なことは何か。
実現したいビジョンの見地から現実を見るのです。
夢を描き志を語るのは大いに結構です。それを仲間と分かち合い、チームで共有し、組織で目標を持つことは事業経営の基本です。
私たちは決して現実から目を逸らすことはできないのです。あまりにも現実が手厳しく辛いときには、一時的に現実逃避して休息してもいい。また現実のしがらみにとらわれていて視野が狭くなっているときには、明るく広い場所に出て遠い将来を構想することも必要でしょう。
しかし、私たちはいつでも現実に生きています。いつまでも逃避はできないのです。いったん逃避してもいつでも戻って来られなくてはならないのです。
優れた経営者はいつも未来とともに現在を見据えています。夢も志も理念も構想も立派ですが、それだけでは馬の肥やしにもならないのです。
ビジョンと現実の両方を見て、両方を共有すること。豊かな創造のための第一歩です。