アンコンシャス・バイアスの4つの落とし穴

アンコンシャス・バイアスとは

 アンコンシャス・バイアスとは、無意識(アンコンシャス)に起こる偏った見方のことです。組織でダイバーシティ(多様性)を促進することの重要性が高まっていますが、その阻害要因の一つに、人々が持つアンコンシャス・バイアスがあると考えられています。組織の多数派とは異なる属性を持つ人に対して偏った見方をしてしまうために、採用・評価・登用・仕事の付与などにおいて、正当な判断ができなくなるという問題が生じるからです。

アンコンシャス・バイアスの例

 職場で見受けられるアンコンシャス・バイアスには例えば次のようなものがあります。
・「体力が必要な仕事は女性には無理」
・ 「中高年は新しい挑戦に後ろ向き 」
・ 「若手社員にはこの仕事はまだ早い 」
・ 「バブル入社組は人材育成が下手 」
・ 「子育て中の人に責任ある仕事は任せられない 」
・ 「外国人社員は海外を担当するべき 」
・ 「エンジニアは人づきあいが苦手 」

 そこで、ダイバーシティを促進する、すなわち多様な人財が活躍できる組織を作るために、アンコンシャス・バイアス研修を実施する企業が増えています。2022年5月にPFCが開催したダイバーシティに関するウェビナーで、聴講者にアンケートをとったところ、半数が自社でアンコンシャス・バイアス研修を導入済みでした。対象は、管理職はもちろんのこと、役員から一般社員まで全社員に受講させる企業も少なくありません。研修では、自身の持つ認識の偏りやゆがみに気付き、それとは違った視点を代わりに取り入れることを学びます。

アンコンシャス・バイアス研修の4つの落とし穴

 一方、ハーバード・ビジネス・レビューの記事「アンコンシャス・バイアス研修はなぜ機能しないのか」に代表されるように、アンコンシャス・バイアス研修を実施しても成果は出ないとの批判もあるようです。ここでは、PFCがクライアント企業のダイバーシティ推進を支援する中で、よく見かける4つのアンコンシャス・バイアスの落とし穴と留意点をご紹介します。

アンコンシャス・バイアス研修の落とし穴その1「自分にはない」

 第1の落とし穴は、受講者の「自分にはアンコンシャス・バイアスはない、つまり、偏った見方をしていない」という思い込みです。したがって、自分は研修を受ける必要もないと思ってしまうし、受けても他人事として講義を聞いている状態になってしまいます。PFCのクライアント企業でも、このようにおっしゃる方を多数お見受けします。

 ある意味、これは無理もないことでしょう。アンコンシャス・バイアスは無意識(アンコンシャス)なのですから、本人の自覚はなくて当然です。しかし、心理学や認知心理学によれば、アンコンシャス・バイアスは人間であれば誰しもに起こる作用なのです。

 というのも、脳科学によると、人間はなんと毎秒1100万ビットの情報にさらされている一方、脳が処理できるキャパシティは毎秒40から50ビットの情報だそうです。ですから、残りの99.9%の情報は、経験や価値観などに基づいて無意識のうちに処理しているのです。

 まずは、「誰しもがアンコンシャス・バイアスを持つ」という前提を共有するところから、取り組みをスタートしましょう。

アンコンシャス・バイアス研修の落とし穴その2「自分はそのような人間ではない 」

 受講者が自分のアンコンシャス・バイアスを否定するもう1つの理由が、「自分は特定の属性を蔑むような人間ではない」と思いたいということがあります。たとえば「男尊女卑」といったことです。しかし、アンコンシャス・バイアスは、差別や軽蔑だけではなく、相手のために善かれと思っての言動にも表れるので要注意です。

 例えば、ある管理職が子育て中の女性部下に配慮して、残業や出張を回避させたとします。(そこには、「子育て中の女性はなるべく家庭にいたいはず」というアンコンシャス・バイアスがあります。)それを歓迎する女性もいるでしょうけれども、「子持ちになった途端、チャンスを奪われた」と感じる女性もいます。相手への配慮のつもりが、モチベーションダウンにつながってしまうことがあるのです。

 善意がアンコンシャス・バイアスに基づくことがあることも認識し、せっかくの善意が逆効果にならないためにも、アンコンシャス・バイアスを学ぶ必要があるのです。

アンコンシャス・バイアス研修の落とし穴その3「チェックリストでチェックしたら大丈夫だった 」

 アンコンシャス・バイアス研修では、よくチェックリストを用いて、受講者にバイアス度合いを自己チェックしてもらうことがあります。そこで、様々な気づきを得る人もいますが、「すべてクリアできているから自分は大丈夫」と安心してしまう人もいます。これが3つ目の落とし穴です。先述のとおり、アンコンシャス・バイアスは誰しもが持つものであり、「大丈夫な人」はいないのです。

 チェックリストに載る項目はあくまでも代表的なものに過ぎず、様々な状況における多種多様な属性の人に対してありうるバイアスをリストアップしようとしたら、リストは膨大な量になってしまいます。チェックリストよりも大切なことは、日常の職場において他者に自分のアンコンシャス・バイアスを気づかせてもらうことです。そのためには、アンコンシャス・バイアスが何であるか、そしてそれは誰しもが持つものであることの共通認識の下、相互に気軽にフィードバックし合える関係性や職場風土の醸成が鍵となります。

 アンコンシャス・バイアス研修では、フィードバックを与え合うことの意義とコツを伝授することが重要です。

アンコンシャス・バイアス研修の落とし穴その4「それくらいのことで目くじら立てるな」

 中には、「軽い気持ちで言っただけなのに、いちいちアンコンシャス・バイアスだと騒ぎ立てるのはいかがなものか」と眉をひそめる人もいます。確かに、本人は軽い気持ちだったかもしれないし、相手の人も傷つくわけでもなく、軽く受け流すこともあるでしょう。しかし、ひとつひとつは些細なことであっても、積み重なるとそれなりのインパクトになることを、組織心理学の学者らが、「Male-Female Differences: A Computer Simulation」という論文で示しました。

 この論文では次のような例が示されています。ある組織に8つの階級があり、一定の条件の下、業績スコア順に昇格が決まるとします。 最下位の階級では男女比率はちょうど半々で構成され、男性の業績スコアに1%の正のバイアスを付けると、どうなるかをシミュレーションしました。すると、最上位の階級は女性が35%にまで減ってしまうのです。

  「女性は〇〇だから」といった軽い発言でも、そうした小さなバイアスが積み重なっていくと明確な差に発展していくことを示しています。 ですから、小さな芽を摘み取っていく努力は欠かせないのです。このことを組織内で共通認識としてしっかりと共有するようにしましょう。

アンコンシャス・バイアスを学ぶことがダイバーシティ推進につながる

 ダイバーシティが組織にもたらすメリットは、組織の持続的企業価値の可能性に不可欠であることが明確になっています。経営幹部や従業員がアンコンシャス・バイアスを学ぶ機会を提供することは、ダイバーシティを促進するために必要なピースの1つです。社内でアンコンシャス・バイアス研修が未導入の企業は、即刻に導入を検討すべきでしょう。そして、既に導入済みの企業においても4つの落とし穴にはまっていないか改めて見直してはいかがでしょうか。

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