若手に自立を促すには? リーダーシップ開発のすすめ②「フォロワー」としてのリーダーシップ

 前稿、若手社員へのリーダーシップ開発のすすめ①では、社会や環境問題に対して「正しい」ことを行う経営への関心が高まり、同時に組織に依存しないキャリア自律が推奨される中で、若手社員の仕事へのやりがいを高めるために、パーパスという新たなフックを活用する「パーパス・リーダーシップ研修」をご紹介しました。

 PFCでも4月にいくつか新入社員研修を行った中で、今年の新入社員の皆さんの入社動機や仕事に対する意気込みを聞く機会がありました。そこでも「環境に配慮した新素材を開発したい」「業界の存在意義を問い直し、在り方自体を変革したい」といった社会的な意義に対する関心の高い発言が目立ち、パーパス経営が若手社員のエンゲージメントにおいて重要性を増していることを肌で感じました。
 前稿ではまた、リーダーの成長は組織で徐々に大きな仕事を任されるにつれ段階的に発展する(①自分をリード(Lead self) ②組織をリード(Lead people) ③社会をリード(Lead society))という発展段階説をご紹介しました。新入社員のうちから社会貢献という広い視座を備えている発言に触れると、段階的な成長論に固執することの弊害を感じずにはいられません。

 さてそうなると、人事の皆様の心配事は、若手社員の志(Will)はそのままに、いかに足元の成長課題に目を向け、ビジネスパーソンとしての基礎スキルを身に着けてもらうか、ということになるでしょう。今回は、PFCが考える若手のセルフ・リーダーシップの要点をご紹介します。

模範的フォロワーは鵜呑みにしない

 セルフ・リーダーシップは、かつては、フォロワーシップと呼ばれていました。PFCでも数年前まで使っていた「フォロワーシップ研修」という名称を「セルフ・リーダーシップ研修」という名称へと変更しつつあります。しかし、フォロワーシップは組織開発やハイパフォーマンスチーム(好業績を上げるチーム)において、非常に重要な考え方ですので、まずはそのコンセプトをご紹介します。
 みなさんは、理想的なフォロワーというと、どのような人物をイメージされるでしょうか。昨今は、SNSで「フォロワー数」が競われるようになり、フォロワーと言えば「インフルエンサーを信奉して模倣する人」というイメージを抱くかもしれません。あるいはフォロワーは「影響力のあるリーダーに従順についていく人」という誤解を生むかもしれません。しかし、組織開発や高業績チーム研究で論じられたフォロワー像は、それらとは異なります。

 フォロワーシップ研究のロバート・ケリー教授はその著書『指導力革命-リーダーシップからフォロワーシップへ』の中で、「ほとんどの組織における成果のうち、リーダーの影響力がおよぶ割合は1-2割程度にすぎず、残りの8-9割はフォロワーである部下の力に左右される」と述べています。
 競争の激化、カリスマ型リーダーの限界、フラット型組織への移行といった要因に後押しされ、フォロワーシップが注目されるようになっています。上図のマトリックスが示すように、模範的フォロワーは、自分独自のクリティカル・シンキングを行いながら、同時に組織に積極的に参画することが特徴です。「クリティカル」という言葉は「批判的な」と訳されることもありますが、「クリティカル・シンキング」は客観的・分析的に考え、かつ自分だったらこうするという主体的解決者として物事を捉えることを意味します。人物像に落とし込むと次のようになります。

  • 独自のクリティカル・シンキングを持ち、リーダーやグループを見極め、自主的に行動する
    • “独立心が旺盛”
    • “独自の考えを持ち”
    • “革新的かつ独創的で”
    • “建設的な批評を生み出し”
    • “リーダーにものおじせずに接する人物”
  • 組織の利益のためにその才能をいかんなく発揮し、積極的に取りくんでいく
    • “イニシアティブを取り”
    • “オーナーシップを引き受け”
    • “意欲的に参加し”
    • “自発的で”
    • “仲間やリーダーをサポートし”
    • “すこぶる有能で”
    • “守備範囲を超えて貢献する人物”

 いかがでしょうか。従順でもなく、批評家でもなく、そして上司のいうことを鵜呑みにしないフォロワー像です。(こんな部下を使いこなせるだろうか?)と上司の方が襟を正すことになりそうです。また、部下が少しでもこのような姿に近づくように育てたいと願う管理職もいらっしゃることでしょう。

 フォロワーシップは、目標に向けてメンバー全員のリーダーシップを引き出すための考え方ですが、一般的に「フォロワー」という言葉で言われる人物像とは異なっているため、PFCではフォロワーシップ改め、セルフ・リーダーシップと呼び方を変えた次第です。

アサーティブに進言するコミュニケーション力

 セルフ・リーダーシップ人材像に近づくために、行動面で強化できることを二つご紹介しましょう。
 一つ目は、クリティカルに考えたことを、相手を打ち負かして論破する攻撃的(アグレッシブ)な在り方でなく、そして、相手を立てることを尊重しすぎて主張を譲ってしまう受身的(パッシブ)な在り方でもなく、対等な立場で発信するアサーティブのスキルです。
 アサーティブ・コミュニケーション・スキルはe-Learning等による個人学習を採用する企業が増えつつあります。アサーティブの概念を理解し、コミュニケーションモデルを習得して各自が発信力を強化するという狙いであれば、好きな時間に好きなペースで学習する形式が効率的な学習方法となっています。

 一方で、若手社員のリーダーシップ発揮の重要性について共通認識を醸成したり、心理的安全性の実践のためにスピークアップの職場風土を醸成するといった狙いである場合、オンラインも含めた集合研修が効果があります。 リーダーシップ開発では、コミュニケーションを活用して対人影響力を高めることが狙いですから、自分の特徴を活かして周囲にどう貢献するかという各人の気づきを醸成することが集合研修では可能になります。あるオンライン集合研修では、アグレッシブな職場風土の中で主張が難しいと感じていた若手社員の方が、心理ツールによる性格タイプ分析から組織や他者のメリットを優先する自身の強みに気づき、研修の場で職場組織の改善提案をアサーティブに提案してくれました。集合研修の場で、リーダーシップの発揮やスピークアップの実践を体験する機会を提供することで若手社員のセルフ・リーダーシップを強化することができるのです。

上司の支援を自分から取りに行く

 PFCがセルフ・リーダーシップとして提唱するもう一つの重要な行動は、自分の成長に必要な支援を上司との1on1を通じて自ら獲得するための知識とスキルです。リモートワークが続く中で、ますます重要性が増しているキャリア自律や、自立的な成長促進の具体的行動です。

 上司の側が部下の成長ステージを見極めて、状況に対応して関与度合いを変えるスキルが、状況対応型のリーダーシップスキルです。SLII®を受講いただくと、タスクや目標に対する部下の開発レベルを診断し、上司としての適切な育成行動の取り方が学べます。この部下の側のトレーニングが、セルフ・リーダーシップ研修です。自分の成長課題を意識しながら、日々の業務と上司との1on1を自身の成長機会として活用する。メンバーとしてこのような行動が身につくことは、管理職に向けた準備に他なりません。ご興味のある方は、ぜひ以下の研修概要をお読みください。


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フォロワーシップ研修(セルフ・リーダーシップ研修)
アサーティブ・コミュニケーション研修
ブランチャード事業部セルフ・リーダーシップ研修