「DX推進:CDOは組織変革をどう推進したか」セミナーレポート<後編>

 2021年10月29日に、PFCとCELM社との共同ウェビナーの第2弾となる「DX推進:CDOは組織変革をどう推進したか」 が開催されました。

  レポート前編では、松村卓朗によるオープニング・スピーチをご紹介しています。前編はこちら をご覧ください。

 今回ご紹介するのは、後半のQ&Aセッションです。現役のCDOである三枝幸夫氏(出光興産株式会社 執行役員 CDO/CIO)ならびに、 CDO Club Japanにより「Japan CDO of The Year 2020」を受賞された福士博司氏(味の素株式会社 取締役 代表執行役副社長 CDO)のご講演に対して、様々な質問が寄せらせました。

 質問が集中したのは以下の3点でした。三枝氏・福士氏のお二人それぞれにお答えいただき、さらにそのお答えに対してファシリテーターがサブ質問を投げかけるという形で進行しました。

1)DX推進体制の作り方、特に事業部門との関係は?
2)文化・意識の変革をどう進めるのか?
3)DXの効果測定はどう行うのか?

 Q&Aセッションの要旨を以下にまとめましたので、本レポートから、DXを推進する際の組織変革に関する何らかの示唆を得て頂ければ光栄です。

1.DX推進体制の作り方、特に事業部門との関係は?

出光興産株式会社・執行役員 CDO/CIO三枝氏(以下、出光興産・三枝氏):
 主導権をとるのはコーポレートか現場か、というのはどのような組織変革でも必ず起こりうる問題だ。DX部隊を作って推進しようとしても、しかしPLを持っているのが事業部である限り、現場は簡単には従わない。そこで、経営と握り、経営のコミットメントを示すことが不可欠だ。また、権限だけで動かそうとするのではなく、DXをやると俺たち/私たちも便利になるんだ、という理解があると積極的に関与してくれるようになる。

味の素株式会社・取締役 代表執行役副社長 CDO福士氏(以下、味の素・福士氏):
 DX推進部隊は、既存のラインとは必ずぶつかると考えた方がよい。変革チームと比して、元々からあったのは現場だし、予算を持っているのも現場だからだ。従って、経営会議がコミットするしかない。
 ただ、DX1.0は必ずうまくいく。「OE(生産性を上げる)」ための取組みは否定も反対もしようがない。DX2.0は「エコシステムを変える」ための取組みなので軋轢が生まれる。経営会議のコミットが欠かせないのはここからだ。
 さらに、DX3.0「事業モデルを変革する」からは、外すなわち「社会課題を解決する」に向かわせる必要があり、経営会議の牽引力が問われる。味の素では、第三者を入れた役員研修を徹底して、パーパス経営に切り替えた。

2.文化・意識の変革をどう進めるのか?

味の素・福士氏:
 まずは変革しようとする意思が重要。経営層が腹を割って話し意思統一すること。そして事業部長たちとの双方向対話の時間が最重要。その上で、ボトムアップを促す。振り返ると、 DX1.0 「OE(生産性を上げる)」 への取組みがよかった。社内の競争意識と協調意識を生んだ。

 変革推進支援は、グローバルに同じ方法論を導入・展開できるコンサルに依頼。特にミドルに焦点を当て、新しく入ってきた人であってもすぐに理解できるようにトレーニングし、ミドルアップダウンで変革が促進することを狙う。

 カルチャーの変革に取り組むきっかけは、パフォーマンスが明らかに下がったからだ。パフォーマンスのモニタリング指標はカルチャー変革の武器になる。カルチャーを変えるきっかけとなるし、変化状況を把握し加速化するのにも大いに役立つ。

 味の素では、2つの指標を用いた。
 1つ目はエンゲージメント=内側の評価。業績が低下したときにエンゲージメントは落ちた。
 ただし、エンゲージメントスコアは、人事に任せると変なことが起きる。事業ごとに比較しようとしたり、他社と比較しようとしたりする。大切なのはスコアが上がること。
 2つ目はブランドスコア=外から見た評価。やはり、業績が低下したときに落ちている。これも他社と比較したりするのは意味がない。

出光興産・ 三枝氏:
 組織風土は、会社によって大きく異なる。
 変革に取り組む際は、なぜこの癖になっているかを解明し、それに合わせた変革のストーリーが必要だ。 癖の原点に、創業者の言葉・精神が今だに残っているというようなことが少なくない。 出光の場合は「1人1人が経営者」。この考え方がコミットにもなるし反発を生むことにもつながる。
 創業者の信念を、今の世の中に翻訳したらどうなるか、ということを考えることがカギとなる。 信念の核は今の世でも変わらないが、「デジタル化したらどうなるか」、を皆が理解できると強い推進力になる。

3.DXの効果測定はどう行うのか?(また、短期的な費用対効果が求められ、長期的な成果を狙うDXに取組めなくなるがどうすべきか?)

出光興産・三枝氏:
 現場がモニタリングすべき解約率等の指標は、リアルタイムで把握できるようになっている。経営は、ビジネスパフォーマンスを1年に1回レビューする。その際にDXの取組みの効果測定を行う。
 (短期的な)費用対効果が求められると(長期的な成果を狙う)DXに取組めないのでどうしたらよいかという相談をよく受けるが、ロードマップを示すことが大事ではないか。特に、経営陣にはビジョンを示す+財務には財務が納得できるような回収シナリオを示す、の二本立てでいくしかない。

味の素・福士氏:
 パフォーマンスレビューに、DXの取組みも織り込んでいる。
 「経営陣は本気で取り組んでいるか」「内部の士気は上がったか」等の項目を設けている。(短期的な)費用対効果が求められると(長期的な成果を狙う)DXに取組めないのでどうしたらよいかという相談もよく受ける。長期ゴール+アーリーウィン(短期成果)の二本立てが必要だろう。味の素では、ZOOM in+ZOOM outと呼んでいる。
 一方、株主等の外部のステークホルダー向けには、必ずしも業績などの財務指標である必要はなく、エンゲージメント等の非財務指標を開示することが有効。

セミナーの配布資料をご希望の方は、(一部改編の上)お渡しすることができます。ご遠慮なくご連絡ください。