グローバル組織開発ハンドブックより~<事例>国際提携に失敗した2社

国際提携した2社のチームが機能しなかった訳は?

グローバルチームがつくられても、途中で機能しなくなる典型的な事例を具体的に見ておこう。ある日本企業、A社が国際提携をした例を考えてみる。

総合電機メーカーのA社は、ヨーロッパの老舗メーカー B社と、消費者向けエレクトロニクスの1分野において合弁会社を設立することにした。B社には歴史があり、ヨーロッパ市場では確固としたブランドと地位を築いている。パテント(特許取得)数も多く、ヨーロッパの技術者にとってあこがれの会社でもあった。

A社にとっては、これが初めての国際提携である。これまで単独で欧州市場を攻略してきたが、いまひとつ成果が上がらなかった。B社とパートナーシップを組むことで、一気にヨーロッパ市場、そしてグローバル市場での存在感を高めようという戦略だ。商品開発においても、双方の技術力を結集すれば、さらに魅力的な商品開発が可能なはずである。日本市場でしのぎを削ってきたA社は、消費者にアピールする商品づくりには自信があった。

 

希望に溢れたスタートだったが……

双方の期待は高く、メンバーの士気が高まるなかで合弁会社は立ち上がった。各領域において、いかにスムーズにオペレーションを立ち上げるか、まずはマネジメント層の間で活発な議論が繰り広げられた。
「品質に対する強いこだわりは共通だ」、「日本とアメリカほどの気質的な違いはない。むしろ国民性は似ている」、「双方の強みを活かすシナジーも、双方の弱みを補える補完関係も期待できる」
そして、経営陣からは高い目標が示され、新会社は一丸となって、希望にあふれたスタートを切った。
しかし数カ月後、状況は一変することになる。

 

5時に帰宅してしまう社員が

新会社が発足して間もなく、職場のなかにはチームが数多くできた。
まずは、プロジェクトごとに結成される特設のチーム(=プロジェクトチーム)。合弁会社をスムーズに軌道に乗せるために、多くのメンバーが何らかのプロジェクトに属した。「業務統合プロジェクト(PJ)チーム」「文化一体化PJチーム」「組織連携PJチーム」などだ。

それから、日常業務そのものもチーム(=常設チーム)で運営された。つまり、自分が従来から所属している部や課でもチームリーダー(部長や課長)がいて、定例のチームミーティングを実施し、チームメンバーは他のチームメンバーとともにそれぞれの業務遂行に勤しんだ。

しかし、そのうち聞かれ始めたのは、チーム運営がうまくいかないという不満の声だった。
最初に、プロジェクトチームに参加したA社側の社員に聞いてみると、B社側の社員に対して、「個人プレーが多くて、チームでの作業が進めにくい」「夕方5時には帰ってしまうのでは、そもそもミーティングも設定できない」といった不満があがった。

 

「これだから外国人は…..」?

一方の常設チームにおいても、仕事をともにするなかで、「工期が遅れてばかりでは困る」「エンジニアは技術ばかりを重視して、消費者の姿を捉えていないのではないか」といった、B社側の社員ならびに仕事の進め方に対してA社側の社員から苦情の声が上がるようになった。

苛立ちが募る現場では、ついにはA社側から「これだから外国人は信頼できない」「外国の会社との合弁自体が無理だったのではないか」と言い出すマネジャーすら出始める始末だった。
また、B社側の社員たちもまったく同じようにフラストレーションを感じていたことはいうまでもない。

よく見聞きすることをもとにして創作したケースではあるが、実際、海外パートナーとチームを組んで協働を始めたはよいが、このようなことが起きる事例は枚挙に暇がない。新しいチームがスタートしたときには、お互いの“共通点”に目が向いて、明るい将来像を描くのだが、共同作業が進むにつれ
て“相違点”がぶつかり合うようになり、これを克服する難しさを実感する。早くプロジェクトや業務を軌道に乗せなければ、と思えば思うほど、お互いに外国人である相手が理解不可能に見えてくる。希望から一転して失望や停滞のムードと化してしまうのである。
国際提携の成否は、まさにこうした葛藤の時期をいかに乗り切り、チームづくりができるかにかかっているといっても過言ではない。

>>詳しくは『グローバル組織開発ハンドブック(東洋経済新報社)』をご覧ください。

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