グローバル組織開発に立ちはだかる3つの複雑性

組織がグローバルになると、コンテクストが複雑性を増すことは想像しやすいだろう。したがって、組織開発の取り組みも難しさを増す。

国や地域が異なることそのものよりも、宗教や習慣といった“文化的要因(Cultural)”によって生じるコンテクストの違いが組織運営を難しくする。あるいは組織運営に不可欠なさまざまなルールや方法などの“制度的要因(Structural)”によるコンテクストの違いにも十分に配慮しなければ、国内では想像もしなかったことが重要課題となりうる。距離の離れた複数の拠点間のやり取りを困難にする“物理的要因(Physical)”もまた、工夫して克服できなければ組織運営上大きな壁として立ちはだかる。(下図)。

国内での組織開発ではほとんど無視することができた、この文化的(Cultural)、制度的(Structural)、物理的(Physical)という3つの要因をもつ複雑性が、組織のグローバル化の行く手に横たわっているのだ。この「CSPの複雑性」こそがグローバルな組織運営の難しさを生じさせ、グローバルな組織開発の必要性を生む要因だと考えられるものだ。

 

文化的要因による複雑性

文化が異なる人たちが組織内に混在することが、協働を難しくさせる。文化は無意識のうちに習慣化されているものだから、自覚のないことが多い。同じ組織で一緒に働いてみて初めて、文化や宗教から派生する生活習慣、あるいは考え方や物事の捉え方などの違いに気づくことが多い。そして、異文化の人はこちらが想像すらしないことを“当たり前”としているので、お互いに「それはおかしい」と不満を募らせることが多くなる。

制度的要因による複雑性

組織の制度や構造が複雑になることや制度が異なることによっても、協働の難易度は増す。
例えばグローバル組織では、組織をより効果的に機能させるためにマトリックスで管理する組織(「機能」と「地域や国」という2つの指示命令系統で管理される組織)にするケースが多い。しかし、「機能」と「地域や国」のそれぞれの上司が存在し、それぞれの指示命令系統が存在することにより、より複雑性が増し、組織づくりがさらに難しくなるケースはよくある。ある日本メーカーのマーケティング本部長は「各地域の担当を集めても、マーケティングのトップである自分より各国のトップの方に目が向いているので、チームビルディングが難しい」と語っていた。

一方、興味深いのは、欧米企業ではその逆の話もときどき耳にすることだ。つまり、各国のトップの方が軽んじられるのだという。社員にとって各国のトップは点線のレポーティングラインで、機能ごとのリージョン(地域)、または本社の上司が実線のレポーティングラインになっているからだ。どちらにしても、制度の複雑性によって、グローバル組織運営の難しさがもたらされていることは間違いないようだ。

物理的要因による複雑性

物理的な要因、すなわち、場所・時間・技術などが世界各地に分散することも協働を難しくする。
グローバル組織ではメンバーの活動場所は1カ所ではないどころか、場合によっては数カ国に分かれてしまうこともある。この場合、時差もあるため、コミュニケーションをとることが一段と難しくなる。また単に時差という意味だけではなく、変革のペース、スキル習得や認識合わせに必要な時間、意思決定のスピードに対する各人の時間感覚(ここには文化的要因による複雑性も絡む)なども異なる。
さらには、活用できるテクノロジーやインフラが異なることによって、メンバーに相当なストレスや負担が生じることも少なくない。テレビ会議やウェブ会議での参加に疎外感を抱いたり、特に新興国で回線事情などにより会議が途切れがちだったりと、なかなか円滑なチームワークが構築できないことに悩む人は多いだろう。

こうしてCSPの複雑性で考えてみると、たとえば「メンバー間のコミュニケーションがうまくいかない」という課題についても、より具体的な側面が見えてくるようにならないだろうか。生活習慣や価値観の違いがあるから、同じ会社であっても国によって組織の構造が異なっているから、あるいはバーチャルミーティングが夜遅くに行われるためにモチベーションが上がらないから……。あるいはこれらの要因がいくつか重なっている、といった具合だ。
(グローバル組織開発ハンドブックP40)

関連記事

ページ上部へ戻る
%d人のブロガーが「いいね」をつけました。